仙台放送では東日本大震災の月命日にあたる毎月11日に、震災で大切な人を亡くした方にお話を伺っています。宮城県東松島市に住む中学校教師の佐藤昂さんは、震災で7人の親戚を亡くした経験を生徒たちに伝え続けています。
佐藤昂さん(32)。石巻市立万石浦中学校で数学を教えています。
13年前、高校を卒業したばかりの佐藤さんは、東松島市の自宅で東日本大震災を経験しました。地震の直後、家族で高台の集会所に避難しましたが、壊滅的な被害を受けた東松島市で、祖母の兄妹とその家族、7人の親戚を亡くしました。
中でも祖母の妹の和子さんとは小さい頃からよく一緒に遊んでいたと話します。
佐藤昂さん
「ふらっと家に遊びに来てくれたり、ご飯を作ったから、これ食べてとおすそ分けを持ってきてくれたり、明るくて活発でシャキシャキという感じ」
和子さんは震災発生の前日も、佐藤さんの家に遊びに来ていました。
佐藤昂さん
「震災の前日にチーズケーキの作り方を教えに家に来てくれて、明日作ってみようねという話をしていた」
和子さんと娘、孫の4人は地震の後、車で避難しようとして津波に流され、帰らぬ人となりました。
佐藤昂さん
「ショックは大きかった、きのう、数日前までは元気にしていたのに、一瞬でそうなるんだ。津波さえなければっていう思いですね」
小学生の頃から教師を目指していたという佐藤さん。数年前から毎月、自分の震災の経験をもとに生徒たちに考えさせる時間を設けています。
佐藤昂さん
「人生にはいろんな選択が迫られて、選ばなければならない時があります。きょうは命の選択に関して考えていきたいと思います教科書は…」
この日の道徳の授業で話したのは、生死を分ける判断・選択について。
佐藤昂さん
「選択がほんとに1分も1秒もない時ってきつくないですか、猶予がないというか。その例としてなんですが、俺の体験を話そうかなと」
佐藤さんは13年前のあの日の和子さんたちの行動を例に語りました。
佐藤昂さん
「娘さんが中学校に孫を引き取りに行った。和子さんが家の近くに住んでいる。どうしよう、それも選択だよね。和子さんを迎えに行くか、迎えに行かないか。結局迎えに行ったんです。荷物を積んでいて時間が経って、4人とも流されて亡くなった」
佐藤さんには震災発生から時間が経っているからこそ、という思いもあります。
佐藤昂さん
「生徒が少しずつ震災のことがわからない年代になってきている。このままだと東日本大震災のことが風化していくのではないかという危機感がある。子供たちに同じようなことが起きたときに、自分の命を守れるようになってほしいなという思いで、このような話をしています」
命を守る行動を「選択」できるように。
佐藤昂さん
「いざ震災がきたら正しい判断ができないかもしれない。だから、こうなったらこうしようというのを、家で話しておいてほしいというのが先生の願いです。そういう考える時間を家でも設けてほしいと思います」
佐藤さんの思いはしっかりと伝わっていました。
中学3年生
「自分たちは震災を経験していない世代だからこそ、他の人からしか聞かないとわからないから、経験している人から聞く話は貴重だなと思っている」
「あの過去は忘れてはいけないものだと思うので、これからも自分でしっかり受け継いでいきたい」
子供たちの笑顔が好きだという佐藤さん。その笑顔を守るために伝え続けます。
佐藤昂さん
「子供たちにも災害時になった時に、大変な選択を時間のない中でさせたくない。大切な子供たちなので、自分の命を大切にしてほしい」
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