国有地に無断設置された競艇のオッズ盤=会計検査院広報室提供

 戸田ボートレース場(埼玉県戸田市)にそびえる巨大な競艇オッズ盤が国有地に無断で設置されたものだったことが、会計検査院の調査で明らかになった。この土地は国が埼玉県に有償で貸し付ける方針を決めたものの契約書を交わさず、半世紀以上、無償で使用されてきた経緯も判明。検査院は11日、財務省に改善を求めた。

 調査が行われたのは、埼玉県営の戸田公園(総面積35ヘクタール)内の国有地約2万2000平方メートル。園内には1964年の東京オリンピックで競技会場になったボート場もあり、オッズ盤の設置場所やコースの一部が国有地にかかっている。

 検査院によると、東京五輪後の66年、埼玉県がボート場を含む国有地を公園の一部として借用したいと申請。これを受けて国は、貸し付け契約までの暫定的な措置として管理を委託する依頼文書を県に渡す一方、会計法で国有財産の貸し付けなどの際に必要とされる契約書は交わさなかった。

 国は委託開始から3カ月後、競艇が有料で開催されていることも考慮し、ボート場部分については有償で貸し付ける方針を決めた。だが91年以降に数回、有償契約への移行を働きかけただけで本格的な交渉をせず、現在に至った。

 この間の72年には、地元自治体の戸田市がボート場近くの草原など国有地の一部を所有権登記した。さらに遅くとも82年以降、同市などで構成する競艇主催団体によってボート場の整備が進み、最終的に幅80メートル、高さ10メートルの鉄骨製オッズ盤が設置された。こうした経緯についても国は長期間把握せず、把握後も対応していなかったという。

 検査院は調査報告書で「国有地は国有財産法に基づいて適切に管理しなければならないという認識に欠けている」と指摘。担当者は「詳しい経緯は問題が古くて調べ切れないが、ここまでずさんだったとは驚きだ。土地の登記も測量もしておらず、有償で貸し付けていた場合の逸失利益すら算出できない」と話した。

 財務省国有財産審理室の担当者は「すでに埼玉県と協議を始めており、適切に対応する。登記の問題なども解決していきたい」とコメントした。【渡辺暢】

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