大阪府警は10日、一般職員の上野梓さん(32)を府警で女性として初めての「足痕跡副鑑定官」に指定した。高い技術や専門性が評価された。上野さんは「女性だからといって、できない仕事はないと思う。今後も技術を磨いていきたい」と意気込んだ。
警察は鑑識活動に携わる人の中で、高度な専門性を備えた人材を「鑑識鑑定官」として指定している。警察官、一般職員を問わず選ばれ、鑑定官は裁判の証拠となる鑑定書の作成が可能。副鑑定官も鑑定官と一緒なら作ることができる。
担当は指紋などを調べる指掌紋係や、現場の状況を精密に記録する写真係などに分かれる。上野さんの足跡係は現場に残された足跡を数万通りとされる靴裏の形状と比べ、容疑者が履いていた靴を特定することなどが役目だ。
上野さんは岸和田市出身。幼い頃から「悪い人を捕まえ、困った人を助けたい」と警察官に憧れた。ただ、小柄で体力面も不安があったことから断念。「サポートする仕事も向いているかもしれない」と考え、2015年から一般職員として働き始めた。
転機は警察署の会計課にいた時。鑑識の足跡係を務めたことのある上司から、足跡鑑定の奥深さを教わった。自分も同じ仕事がしたいと熱望。19年春に府警本部鑑識課への異動がかなった。
最初はシートに残された跡のようなものが、ほこりなのか足跡なのかも分からなかった。雨にぬれたり、幾重にも重なったりした足跡は靴の特徴を浮かび上がらせるのが難しく、同じ足跡と1カ月近くにらめっこしたことも。しかし、持ち前の根気強さで細かな違いも見分けられるようになり、いまや1年間に数千件の足跡を取り扱う。
印象に残っているのは鑑識課4年目に起きた事件。女子大生が路上で男性に額を蹴り上げられる被害に遭った。上野さんは女子大生の額に残った足跡の一部から容疑者の靴を割り出し、容疑者の犯行を裏付ける助けをした。「被害者の心の痛みを少しだが取り除けた気がした」
上司の矢野登志夫・鑑識課長は「上野さんは日々愚直で、きめ細やか。足跡鑑定は根気のいる作業だが、事件解決の根幹を支えている」と激励する。上野さんは「副鑑定官に指定されとてもうれしい」と目を輝かせた。【林みづき】
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