1966年に当時の静岡県清水市(現在の静岡市清水区)で一家4人が殺害された強盗殺人放火事件のやり直しの裁判をめぐり元プロボクサー・袴田巖さん(88)の無罪が確定する中、検察が発表した畝本直美 検事総長による談話について、袴田さんの弁護団が10月10日、静岡地検に声明文を提出するとともに会見を開きました。

静岡地裁による再審判決では捜査機関による証拠の捏造を認定していて、この点について検事総長談話では「具体的な証拠や根拠が示されていない。それどころか、客観的に明らかな時系列や証拠関係とは明白に矛盾する内容も含まれている上、推論の過程には論理則・経験則に反する部分が多々あり、捏造と断じたことには強い不満を抱かざるを得ない」と主張し、さらに「判決は多くの問題を含む到底承服できないものであり、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容」としています。

これに対し、主任弁護人で弁護団の小川秀世 事務局長は「袴田さんを犯人視している。無罪になった人を犯人視することは名誉毀損になりかねない。それを検事総長が談話で発表したのは重大な問題」と怒りをあらわにしました。

弁護団による声明文では、「控訴はやめておくが、巖さんを冤罪と考えてはいないということであり、到底許し難いものである」と指摘した上で、「検事総長が今でも巖さんを犯人と考えていると公言したに等しい。これは、法の番人たるべき検察庁の最高責任者である検事総長が無罪判決を受けた巖さんを犯人視することであり、名誉毀損にもなりかねない由々しき問題と言わなければならない」と断罪しています。

また、今回の判決について「検察官の有罪立証が完全に誤りであったことを明らかにしており、事実誤認があるとする検察庁の判断こそ誤っていたのであるから、検察官には法律上、控訴の理由などまったくなかったものである。この点で検事総長の談話は単なる強弁に過ぎない」とし、談話における謝罪箇所に関して「他人事のような表現であって、非人道的な取り調べや衣類の捏造についての反省すらないもので、何ら謝罪になっていない」と検察を非難しました。

その上で、検察組織に対しては「重大なる冤罪を生み出し、その誤りを改めることに58年もの年月を要した要因を明らかにし、二度と繰り返さないようにするため、捜査・公判手続き全般にわたって厳正かつ真摯な検証をすべきである」と求めています。

さらに、小川事務局長は「改めて修正した談話を検事総長が出すべき」との見解も示しました。

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