家族の介護を理由に仕事を辞める介護離職を防ぐため「支援制度があり、内容も十分」とした企業は約1割――。国民の5人に1人が75歳以上となる「2025年問題」を目前に、働く世代が介護を担うケースがますます増えるとみられる。こうした背景から育児・介護休業法が改正され対策が急がれるが、企業側の意識や取り組みに遅れが目立っている。
就職情報サイト運営の「マイナビ」(東京都千代田区)が7月、民間企業で人事・労務業務に関わる20歳以上を対象にインターネットで調査。618人の回答をまとめた。
5月に改正された育児・介護休業法の主な改正点は▽両立支援制度を個別に周知し、意向を確認すること▽研修や相談窓口の設置で、制度を利用しやすい環境を整えること――の義務化。介護期のリモートワーク導入も努力義務とした。すべての企業を対象に、介護離職防止の強化を図る。
こうした法改正や改正内容について尋ねたところ、「内容を読み、おおむね理解していた」とした人は54・9%。そのほか「内容は読んでいたが理解していなかった」(19・4%)▽「法改正があることは知っていたが、内容は知らなかった」(17・2%)▽「法改正があることを知らなかった」(8・6%)と、4割以上が改正内容を「理解していない」「知らない」という状況だった。
働きながら介護を担う従業員に対する自社の支援制度についてどう捉えているか。「支援制度があり内容も十分」と答えたのは11・5%にとどまった。
そのほか、「支援制度はあるが、見直しが必要」(24・4%)▽「支援制度が整備されておらず、早急に取り組むべきだ」(25・6%)――と、支援制度自体がまだないか、あっても内容が不十分と考える企業が多くを占める。
また、「支援制度はないが、最低限の制度(介護休暇など)があればよい」(19・9%)▽「支援制度はないが部署ごとに対応すればよい」(7・8%)▽「支援制度はないが、企業として取り組む必要はない」(4%)などと、支援制度を整備する重要性が十分に認知されていない状況も浮かび上がった。
では、企業はどんな状況が発生したら支援を検討するのか(複数回答)。「介護をする社員の増加」(43%)▽「従業員からのニーズの高まり」(35・8%)▽「介護離職の増加」(31・9%)――などと課題が顕著化してから対応を考えたいとする意向が強いようだ。
調査を実施したマイナビの担当者は「介護は育児に比べて、従業員が会社に状況を伝えづらい。当事者と企業の温度差がある点は大きな課題だ」と指摘。企業側の対策として「まず社員の実態を把握することが課題解決の一歩目につながる」と助言している。【嶋田夕子】
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