特集は「恩返し」の炊き出しです。地震に続き、大雨で大きな被害が出た石川県能登地方。長野市長沼で飲食店を営む夫婦は、5年前の台風災害で受けた支援の恩返しにと、能登で炊き出しを続けています。


■能登で炊き出しを続ける夫婦

地震と大雨。二つの爪痕が残る石川県輪島市。物資の供給場所となっている美術館の敷地から、おいしそうな匂いが漂ってきました。

焼きそばにから揚げ。切り干し大根などの煮物も。被災した市民への炊き出しです。

被災者(自宅が半壊):
「うれしい、助かります」

被災者(自宅が床上浸水):
「水害後、自宅で作ることができないので、とてもありがたい」


炊き出しをしたのは、長野市長沼地区で飲食店を営む星野良和さん(60)、百代さん(41)の夫婦です。

星野良和さん:
「自分たちが災害にあった時に助けてもらってる恩は一生消えない」

5年前の台風災害で大きな被害が出た長沼。その時の支援の恩返しにと夫婦は能登で炊き出しを続けています。


■5年前の支援の恩返し

星野さん夫婦は長野市信州新町でジンギスカンが入った焼きそばなどを販売するキッチンカーを営んでいました。

5年前の台風19号災害。堤防が決壊し、住宅が濁流にのみ込まれる光景を見た2人はー。

星野良和さん(当時):
「この人たちに温かいものを提供したい、少しでも力になればという思いだけでがむしゃらに頑張っていた」

長沼や豊野で炊き出しを続けました。

当時、長野には全国からボランティアが入り、自分たちと同じように被災した住民を支えていました。


復旧・復興の様子を見守ってきた夫婦は2021年、長沼地区にジンギスカンなどを提供する店「もんも」をオープン。

家族で長沼に移り、地域と共に歩むことを決めました。

妻・百代さん(2021年):
「復興も含めて地域おこしや地域が発展していく力添えができれば」


■「何もなくても食べ物さえあれば」

正月、能登地方を襲った地震。甚大な被害が出ました。星野さん夫婦は直後から避難所などで炊き出しをしてきました。

星野良和さん:
「長野の決壊の時も炊き出しをしていたんですけど、その時に石川・輪島からもボランティアさん来てくれて、輪島には必ず来ようと思っていたので、その思いで来ました」


能登での炊き出しは9月までに25回。復興にはほど遠いことから今後も続けようとしていたところ、能登を襲った記録的な大雨。

濁流が押し寄せる様子は台風19号災害と重なったと言います。

星野良和さん(10月1日):
「長沼と一緒だなって。また同じことが能登半島で起きてるのかなと思ったらぞっとしました」


星野良和さん:
「みそもせっかくだから、信州みそを持ってきて使っている」

10月1日は、豪雨災害後、初めての炊き出し。持ってきた野菜や水は長沼の住民から譲り受けたものです。すぐに食べられる焼きそばの他におかずになる煮物なども用意。

妻・百代さん:
「何もなくても食べ物さえあれば、何か未来を感じてもらったり、今を大事にしてもらえるんじゃないかと思って、メニューも健康になってもらえるような」


長女の陽さん(8)も盛り付けを手伝いました。

長女・陽さん:
「(被災地支援に来るのは何回目?)4回目。(被災者に喜んでもらえると)うれしい気持ちになる」


■被災者「まさか2回も…」

午前11時過ぎ、住民が集まってきました。

被災者:
「お腹減ってきた」

妻・百代さん:
「ね、作っているほうもね」

被災者:
「一緒やね」

星野良和さん:
「お待たせしました、順番にお願いします」


星野良和さん:
「家族の分だけ取っていいよ」

炊き出し支援で連携しているNPOからは500食分を依頼されましたが、「もらえない人がいないように」と750食を用意しました。

被災者(自宅が全壊):
「おいしそうです、帰ってすぐいただきます」

被災者(自宅が全壊):
「まさか2回もそんな目にあうなんて、今まで災害なんてなかった。人ごとだと思っていました。(長野からの支援)うれしいよ、まさかそんな遠いところから来てくれると思わない」


■「先が見えない」

炊き出しを受け取った女性。自宅の様子を取材させてもらえることになりました。

炊き出しを受け取った女性:
「こういう状態の仕事場、天井から屋根みんな(地震で被害に)」

女性は3代続く輪島塗りの箸を作る職人です。正月の地震で住居部分は全壊。隣接する仕事場は全壊を免れましたが、大きく損傷しました。

女性:
「漆も全部ひっくり返って、お箸も全部ひっくり返って、やっとこれだけおさめたんです」

地震の後は近くに住む娘の家で暮らしていましたが、その家も今回の大雨で1階が浸水し今は2階で暮らしているそうです。日中は仕事場に戻って箸を作っています。

女性:
「おいしいです。ゆっくりと今は、みそ汁すすっているような状態でないから時々こうして頂ければ、感謝しています」

2つの災害で折れた心を持ち直すのは容易ではありませんが、輪島の伝統工芸を何とか守っていきたいと考えています。

女性:
「地元産業を継続して頑張っていこうかと思うんですけど、先がまだ見えません。元の生活に戻りたいですね、普通にね。でもしょうがない。仕事だけでも注文あるので、それを励みに前を向いて進みたい」


■今後も能登で炊き出し支援

星野さん:
「体が資本だから」

被災者:
「ありがとうございます、あなたも元気にいてよ」


今も約400人が避難生活を送る輪島市。星野さん夫婦は今後も炊き出し支援を続ける考えです。

炊き出し支援を続ける・星野良和さん:
「地震の後の水害だったんで、カラ元気というか、なるべく明るくしてくれていると思うけど、やっぱり胸の中は尋常じゃないんじゃないかなっていうのも感じながらやらせてもらいました。自分たちが災害に被災した時に、遠くから来てくれてる人たちもいるのに、来てくれてる地域の人たちが災害にあって、知らんぷりはできない」

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