家族でドライブを楽しむ際に安全運転はもちろんだが、万が一、交通事故に遭ったときに子どもの命を守ってくれるのがチャイルドシート。正しく車に取り付け、ベルトで体の適切な場所を固定することも重要だ。

「大泣き」か「命」 親の葛藤と現実

多くの親が直面するチャイルドシートについての悩み。2歳児と0歳児の母親は「(着用時に)やっぱり大泣きでことがすすまないことがあるので、ちょっと毎回それが悩み」と打ち明ける。

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また、4歳児と1歳児の母親も「『ちゃんとつけんといかんよ』とは言ってるんですけど、なかなかやんちゃざかりになって、なかなか言うこと聞いてくれないです」と同様の悩みを抱えている。

しかし、この「面倒」が子どもの命綱となることを、私たちは知らなければならない。

道路交通法では、6歳未満の子どもを車に乗せる際にチャイルドシートの装着が義務付けられている。しかし、子どもが嫌がったり、シートの取り付けが面倒だったりして、使用しない人も少なくない。

警察庁と日本自動車連盟(JAF)の調査によると、愛媛県内では6歳未満の子どものうち、チャイルドシートを正しく着けていたのは81.1%だ。

西予警察署交通課長の西岡圭佑警部は「8割という数字ですが、言い換えれば5人に1人、5台に1台がつけていないと言い換えられる」と警鐘を鳴らす。

約150kgの衝撃と4.2倍の致死率

チャイルドシートを使用しないことの危険性は、想像をはるかに超える。中には、シートベルトさえつけずに座ったり、親が抱っこして乗ったりする車もある。JAFの実験映像は、その恐ろしさを如実に物語っている。

抱っこされた状態で事故に遭遇すると、子どもは前方に放り出され、頭を強く打ち付ける。さらに、愛媛県警察によると、体重5kgの子どもを抱っこしていた場合、急ブレーキをかけると親の腕には約150kgもの衝撃がかかるのだ。

愛媛・松山市では2019年に車同士が衝突し、チャイルドシートを着けていなかった生後6カ月の女の子が車外に投げ出され、意識不明の重体となる事故があった。

西岡警部はさらに、「(チャイルドシートを)正しくつけている場合、つけていない場合では4.2倍の致死率、4倍に跳ね上がってしまいます」と、衝撃的な事実を明かす。

正しい装着で「子どもの命」を守る

この深刻な状況を受け、県警とJAFは共同で、愛媛・西予市の認定こども園に通う子どもとその保護者約50人を対象に、チャイルドシートの装着方法をレクチャーする講習会を開いた。

JAF愛媛支部事業係の権名津博さんは、正しい装着の方法を「お母さんたち、多分(体重が)軽いと思うんですけど、それでも大丈夫ですから膝をぐんと入れていただいて…こうするだけで大人で引き離そうとしてもいけないくらいになります」と実演した。

チャイルドシートの正しい装着には、主に2つのポイントがある。

1つは、チャイルドシートを正しく車に取り付けること。シートに体重をかけ、カチッと音がするのを確認しながらベルトをきつく締めることが大切だ。また、2012年から採用が義務付けられたISOFIX取付装置は、はめ込み型でさらに取り付けが簡単だ。カチッと音がするまではめこみ、サポートレッグでぐらつかないよう支える。

2つ目は、ベルトで体の適切な場所を固定すること。JAF愛媛支部広報担当者の大成将司さんは「肩ベルトを通していただく。あとハーネスでがっちり固定していただくというところでお子さんを守ることができます」と実演しながら説明する。

西岡警部は「いわゆるぐずったりといいますか、そういったことも多くあるかと思います。ただそこは子どもの命を守るということを第一に考えて、チャイルドシートを正しく着用していただけたらと思います」と重要性を訴える。

150cm未満は要注意 「身長」が新基準に

チャイルドシートの重要性は6歳未満に限らない。2024年8月18日に福岡県で起きた事故では、軽乗用車が路線バスと衝突し、車に乗っていた幼い姉妹が死亡した。姉妹はシートベルトをしていたが、腹部をベルトに強く圧迫され死亡したとみられている。亡くなった姉は7歳で、法律上チャイルドシートを使う義務はなかった。

JAFの実験映像では、時速55kmの車が正面衝突すると、身長の低い子どもはシートベルトを正しくつけられないため、体が前に乗り出して首にベルトが食い込み締め付けられている様子が確認できる。

この問題に対応するため、JAFは9月、チャイルドシートを使用する基準を法律で定めた「年齢」ではなく「身長」にし、さらに推奨する身長をこれまでより10cm高い「150cm未満」に変更した。

大成さんは正しいシートベルトの位置について、「肩を通って、真ん中の胸骨を通して、最後に腰骨を通る形でシートベルトを着用するのが、正しい位置」と説明した。

身長100cmのダミー人形を使った実験では、子どもの場合、正しくシートベルトをつけていないと首あたりにベルトがかかる上に、腹部にもかかるという危険性が明確に示された。

愛媛県の6歳の子どもの平均身長は115cm前後。推奨基準の150cmを越えるのは12歳頃だ。つまり、小学生のほとんどがチャイルドシートやジュニアシートの使用対象となる。

大成さんは最後に「身長に達するまでは、ぜひともジュニアシートなどを活用いただき、お子様の命を守ることができればというふうに考えております」と締めくくった。

県警もJAFの身長の基準を重視し、150cmを超えていない場合はチャイルドシートやジュニアシートを装着するよう呼びかけている。

子どもの成長に合わせて適切なシートを選び、正しく使用することが、かけがえのない命を守る第一歩となる。あなたの大切な人を守るため、今一度チャイルドシートの重要性を考え、正しい使用方法を確認してみてはいかがだろうか。

(テレビ愛媛)

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