鹿児島県をはじめ各地に大きな被害をもたらした台風10号。この影響で、鹿児島県の屋久島にあった樹齢3000年といわれる「弥生杉」は根元から折れてしまった。鹿児島テレビは特別に許可を得て、世界自然遺産の島で台風の爪跡を撮影した。

台風10号で大きな被害 屋久島の今

2024年8月22日に発生した台風10号。

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当初はそのまま北上し、近畿地方や北陸地方などに影響を及ぼすとみられたが、急激に西よりに進路を変え、29日に鹿児島・薩摩川内市付近に上陸した。各地で倒木や家屋の損壊といった被害が発生したが、特に大きな被害に見舞われたのが屋久島だった。

なかでも観光名所の一つである白谷雲水峡は落石・土砂崩れなどの影響で、道中の県道数カ所では片側通行が続く。

そんな中でも9月20日から徐々に登山が再開されたが、土砂崩れなどの影響で3つある白谷雲水峡の登山コースのうち2つは通れず、現在は一番時間のかかるコースをさらに迂回して巡るしかない状態だ。

閉鎖されているコースの一つ「弥生杉コース」はどうなっているのか、特別に許可を得て撮影させてもらった。弥生杉の手前には行く手をふさぐようにいくつもの倒木が。その先にあった弥生杉は看板が見えるだけで根元から折れてしまい、見る影もない状態になっていた。

樹齢3000年の弥生杉が無残にも…

屋久島では樹齢1000年を超える杉を「屋久杉」と呼ぶ。

推定樹齢3000年の弥生杉は高さ26メートル、太さ7.6メートルの巨木だったが、太く張った根しか残されていない。

どれほど強い風が襲ったのか。無残にも折れて転がる太い幹からは、台風による被害の甚大さがうかがえる。

屋久島レクリエーションの森保護管理協議会事務局の日髙美智男さんは、弥生杉について「身近に行けて皆さんに親しまれた。年配の方でも容易に行くことができた屋久杉だった」と話す。「それが倒れたということはもう非常に悲しいし、だいぶツアー客は減ると思う」と、今後の見通しを示した。

観光客たちからは前向きな声も

その一方で、屋久島の自然を楽しみに国内外から訪れた観光客たちは、一部コースの閉鎖を残念がりつつも、唯一巡れるルートを満喫しているようだった。

「(弥生杉を)見られたら見たかったが、太鼓岩がきれいだったので十分」と話す観光客。台湾の観光客を案内したというガイドも「残念だが屋久島はほかにも見所はたくさんある。そういう所に案内するという意味では良い機会だったのでは」と、あくまで前向きだった。

前出の日髙氏は「弥生杉のまわりの植生も非常に貴重だった。残念ながら今の状態ではツアー客は案内できないが、一日も早い復旧が望まれる」と語った。

今後は、林野庁の屋久島森林管理署を中心とした検討会を設置し、対応を協議する予定となっている。何千年という時間が作り上げた自然を元通りにすることはできないが、台風という自然の脅威も、また自然の一部。今後、世界遺産の島は我々にどんな変化を見せてくれるのか、長い目で見守っていきたい。

(鹿児島テレビ)

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