岩手県宮古市で９月１４日に開かれた伝統の「秋まつり」。
２０２４年は能登半島地震で被災した石川県の高校生たちも参加し復興へ思いをはせた。
石川県輪島高校和太鼓部の３年生・川端光太朗さんは、９月１４日のみやこ秋まつりに招かれ部員たち５人で初めて岩手県を訪れた。
輪島高校和太鼓部３年 川端光太朗さん
「輪島を忘れてほしくない。だんだんニュースも出てこなくなったり。同じ被災地だと思うので、どうなっているんだろうという気持ちで来た」
招待したのはまつりの実行委員会の盛岩幸恵さん。
川端さんたちの被災状況を知り、太鼓を披露する場を提供することで復興の力になりたいという思いから、直接輪島市へ出向きオファーをした。
みやこ秋まつり実行委員会 盛岩幸恵さん
「実際（輪島市へ）行ってみてすごく震災のことを思い出して、私たちもすぐ復興したわけではないし、皆さんからたくさん応援いただいてようやくここまで来た感じ。お互い元気になれればいいかなと思っている」
元日に発生した能登半島地震により輪島高校は校舎の一部に亀裂が入るなどの被害があり、断水は今も完全には復旧していない。
和太鼓部は部員が１２人いたが、自宅が大きな被害を受け転校したり避難したりとバラバラになり、練習を再開できたのは地震の発生から約４カ月後だった。
そのうえ練習場所だった柔道場は避難所として使われていたこともあり、狭くて音を出しづらい教室での練習を余儀なくされている。
輪島高校和太鼓部３年 川端光太朗さん
「他のチームよりは絶対練習量が少ないと思うので。でも自分たちもたたいていて楽しいので、そこが一番輪島高校の強いところ」
まつりに参加する日の午前に、生徒たちは景勝地・浄土ヶ浜を訪れた。
このうち、観光施設浄土ヶ浜マリンハウスは東日本大震災の津波で建物と船が流されたが、その２カ月後、石川県から中古の船を買い付け再開した。
代表の早野秀則さんは多くの支援で復興できた経験を話した。
浄土ヶ浜マリンハウス 早野秀則代表
「なかなか進まないと思うけど、一歩一歩進んでいくから大丈夫だ。一緒に頑張りましょう」
このあと生徒たちは小型のサッパ船に乗り震災の爪痕を目の当たりにした。
洞窟の遊覧ガイドが「（岸壁の上の）お地蔵さまも１３年前に東日本大震災津波を後ろから受けた」という説明を聞いて、生徒たちは想像を超える高さまで来た津波の脅威を実感していた。
輪島高校和太鼓部２年 稲木茉那さん
「津波って本当に怖い。実際に来て見ることが重要」
輪島高校和太鼓部３年 川端光太朗さん
「一歩ずつ進んでいけば、こんなにきれいになるんだと思った」
午後はいよいよ郷土芸能やダンスなど大勢の市民でにぎわう「みやこ秋まつり」のメインステージへ。
緊張感が高まってきたなか、いよいよ輪島高校の出番だ。
披露する演目は「輪島大祭」。輪島市を代表する夏祭りの太鼓演奏をアレンジしたものだ。
１４年前の創部当初から受け継がれる伝統ある演目で輪島の音を響かせたいという思いがあった。
最年長の川端さんは、威勢のいい掛け声とともに力強い音を鳴らす。
輪島高校和太鼓部３年 川端光太朗さん
「震災があっても輪島の伝統は届けようという気持ちだけでたたいた」
５人で響かせた輪島の音。観客からは惜しみない拍手が送られた。
観客
「かっこよくて太鼓の音がどんどん体にきてすごくよかった。震災に負けないで頑張ってほしい」
「わざわざ来てくれてありがたかった、自分たちが大変なのに。すごく泣きそうだった。うれしかった」
みやこ秋まつり実行委員会 盛岩幸恵さん
「感動した。この子たちいるからきっと大丈夫だと思う。能登も元気になると思う」
会場からはアンコールもわき、盛り上がりを見せていた。
全力を出し切った川端さんは、どんな時でも伝統をつないでいく決意だ。
輪島高校和太鼓部３年 川端光太朗さん
「みんな温かい人たちなので元気を逆にもらえる。輪島に行ったら岩手は１３年たってこういう状況だったとか話していけたらいい」
能登の未来を担う若者たちは東日本大震災からの復興を体感し、前に進んでいく。
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