福島第一原子力発電所で廃炉作業の“最難関”とされる燃料デブリの取り出しをめぐり、またトラブル発生だ。取り出しに欠かせないロボット先端に付いているカメラが、何らかの原因により故障。作業着手から1週間、燃料デブリ取り出す見通しが再び立たなくなった。
東京電力の担当者:「装置先端カメラの映像が、遠隔操作室内のモニターに適切に送られていないことが確認されました。例えると、深夜にテレビ画面がカラーバーになるようなイメージ、お分かりでしょうか。そのような状況になってございます」
東京電力が17日夕方の会見で公表したカメラの故障。
福島第一原子力発電所2号機では、17日にも3グラム以下の燃料デブリをロボットで掴み上げ採取する予定だった。
東京電力による17日午前の説明では…。
東京電力の担当者は「大きさ的には(直径)5ミリ以下を狙っていきますが、それはカメラで当日見ながら(採取する箇所を)選んでいくということになると思います」と話していた。
極めて線量が高く人が立ち入れないことから、廃炉の最難関とされ、事故後初めてとなる燃料デブリの取り出し作業。遠隔操作で行われているため、ロボットに取り付けられたカメラにより、燃料デブリの位置などを把握する必要がある。
しかし、作業着手から17日で1週間、欠かせない役割を担うカメラの故障に直面した。
8月にはロボットを押し込むパイプをつなぐ順番を間違える作業ミスが見つかり、約3週間中断された取り出し作業。カメラが故障した原因は不明で、再開の見通しは立っていない。
<担当記者解説>
◇故障したカメラというのはどういったものか?
東京電力は、燃料デブリを釣り竿型のロボットを格納容器の底まで伸ばし、ツメがついた先端部分でつかみあげる計画。今回故障したカメラは、つかみやすい燃料デブリの位置を把握するためのもので、先端部分に付けられていた。
◇遠隔操作で行われる作業は、カメラから送られてくる映像が欠かせないと思うが、今回の故障は放射線の影響は?
東京電力によると、高い放射線にも耐えられる設計になっていて、着手開始から1週間で45日間耐えられるため、十分な余裕がまだあるということだ。
現時点で東京電力は、カメラの故障の原因は不明としている。修理をするか、別のカメラを使用するといった選択肢が考えられるが、こうした作業にも時間がかかる。国の担当者は今後の作業スケジュールに厳しい見通しを示している。
経済産業省・木野正登参事官は「(ロボットは)一回格納容器の中に入れてしまっているので、汚染もかなりしています。そう簡単にその装置自体を取り扱えるかどうかもわからないですし、色々やっていくと、やはりある程度の時間はかかってしまいますよね」と話した。
◇燃料デブリの取り出しは廃炉の最難関とされ、その難しさは分かるが、トラブルが相次いでいると思う。
試験的取り出しは当初、2021年に着手が予定されていた。コロナ禍によるロボット開発の遅れなどにより、これまでに3回延期されてきた。
さらに、8月には着手直前になり作業ミスが発覚し、原因究明と再発防止のため約3週間作業が中断されている。相次ぐトラブルは、廃炉作業への不信感にもつながりかねない。
経済産業省・木野参事官は「デブリ取り出しというのは、高さの分からない山を登っていく作業だと思っているので、はっきり計画が立てられないわけですよね。先が見えないんです。なので、一歩一歩着実に進んでいくしかないんですけれども、まだまだ先は不透明だという風に思ってますね」と話した。
事故を起こした1号機から3号機には、燃料デブリが880トンあると推計されている。そうしたなか、“3グラム”の取り出しに難航する現状をみると、東京電力と国が掲げる2051年までの廃炉完了が揺らいでいるように思う。
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