奈良国立博物館(奈良市)は「第76回正倉院展」を10月26日~11月11日の17日間の日程で開催する。正倉院の宝物57件が出展され、うち10件が初公開。宮内庁正倉院事務所が1972年から製作を続けてきた宝物の再現模造品も近年の7点を並べ、実物と見比べることができる。
奈良博では24年ぶりの出展となる「黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう)」は、中国も含め現存する唯一の七宝鏡。複雑な構造に加え、ガラス質の緑釉(りょくゆう)と金板で艶のある美しさを演出している。再現模造品と並べて展示する色ガラス製の装飾品「瑠璃小尺(しょうしゃく)」や「瑠璃魚形(うおがた)」も来場者の目を引きそうだ。
会期中無休。コロナ禍で導入した日時指定の前売り券のみを販売する形式を継続し、インターネットなどで発売している。前売り券は当日も入館時間直前まで販売するが、博物館では購入できないため注意が必要。問い合わせはハローダイヤル(050・5542・8600)へ。
肘置きを再現模造、実物と並べて展示
古代のクッションに聖武天皇もモフモフくつろいでいた――?
正倉院宝物にサイズ違いで2点だけ含まれている御軾(おんしょく)(肘置き)を、宮内庁正倉院事務所が実物と同じ素材・構造で再現模造した。両肘を置いてのんびりくつろぐための道具といい、正倉院展で実物と並べて展示される。
模造したのは「紫地鳳形錦御軾(むらさきじおおとりがたにしきのおんしょく)」(模造品は長さ80・5センチ、幅25センチ、高さ20センチ)。CT画像による解析結果から、マコモのむしろを束ねて作った芯を深さ8センチまでくりぬき、内部や上部に真綿を詰めて麻布と錦で包む構造で2023年度に完成させた。この御軾で特徴的なのは、鳳凰(ほうおう)を葡萄(ぶどう)唐草文で囲む錦の文様。このために03年に模造してあった緯錦(ぬきにしき)を使って、文様の向きや縫い合わせる位置なども再現した。
同事務所の飯田剛彦所長は「衣装や調度品などで日常風景を再現することで、聖武天皇を身近に感じてもらいたい」と話した。【稲生陽】
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