中断している燃料デブリの取り出しについて、「思い込み」「協力企業任せ」といったミスの原因が少しづつ明らかになってきた。東京電力は、作業の再開を「順調にいけば来週」としている。
福島第一原発2号機で作業が中断されたままになっている燃料デブリの取り出し。
齋藤健経済産業相は、8月24日東京電力に対し「地元、国内外に不安を抱かせるものでありまして、猛省を促したいと思います」と述べた。
経済産業大臣にも強い言葉で原因究明を求められた東京電力は、9月5日、その経緯を説明した。
東京電力の担当者:「高線量で重装備が必要な環境下での外見上識別が難しく、非常に線量が高いことから、退域することを最優先したと」
東京電力が強調したのは、現場の放射線量が「極めて高い」ということ。
燃料デブリを取り出すロボットを押し込むための5本の円筒状の棒を現場に運び込んだとき、「被ばく量の上限が迫り、途中で作業をとめた」ということが、次の日の作業員に伝わらず。全員が「作業が終わったもの」と思い込んで、間違ったままの準備が進み、結果的に、作業を担った協力企業はもちろん、東京電力も1ヵ月ほどミスを放置して、燃料デブリの取り出し作業が始まろうとしていた。
東京電力の担当者は「その時はですね、順番通りであったと判断していたので、我々としては、それ以降は確認する必要がないという風に判断していたと」と説明。
初歩的なミスに、地元からも不安の声があがる。
大熊町の住民は「思わない、全然思わない。このままだらだら行くんじゃないの。安全にやってもらうしかないよね」「起こってしまったものはしょうがないと思うので、そこを乗り越えながら、着実に安全に廃炉に向けて(作業してほしい)」と話す。
福島第一廃炉推進カンパニー・小野明プレジデントは「いきなり一番初めのところで立ち止まるような結果になってしまったということは、期待を裏切ってしまった、我々に対する不信感を招いてしまったという非常に大きな問題だと思っています」と話した。
「安全を最優先にいったん立ち止まる」東京電力は、社員自ら現場の確認をするなど数日かけて準備をしたうえで、作業再開は「順調にいけば来週」としている。
<ミスの原因・担当記者解説>
◇現場ではいったい何が起きていたのか?
まず、試験的取り出しは、格納容器の中に釣り竿のようなロボットを入れて燃料デブリを取り出す。
このロボット全体を5本の棒で押し込んでいく必要があるが、この棒を運び込むとき、被ばく量が上限に達しそうになったので、4本分で作業が中断した。
これが誰にも共有されず、しかも途中でこの1本が別な場所から見つかったにも関わらず、「重装備で視界が悪い」「線量が高く時間制限がある」ということから、本来の場所とは違うところに入れられたまま、1ヵ月放置され、作業着手を迎えてしまった、ということ。順番が違うと、引っかかったり接続が外れる恐れも出てくる。
◇今後、どう解決する?
東京電力は、社員自らが現場を確認して作業を再開するとしているが、そもそもこの「棒の運搬作業」について、「単純作業」「慣れた作業」として協力企業任せにしていたのは事実だ。
重要な局面の最初の一歩でつまづきは、東京電力の廃炉の遂行能力にも疑問を持ってしまうので、安全に、着実に前に進んでもらいたい。
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