主人の死後も帰りを待ち続けた秋田犬「忠犬ハチ公」の新たな写真が見つかり、白根記念渋谷区郷土博物館・文学館(東京都渋谷区東4)で開催中の「新収蔵資料展」で写真パネルが展示されている。お手のような仕草をしているハチの姿が写っており、同館の担当者は「これまでにはなかった、ハチの一面が分かる貴重な1枚」としている。
発見された写真は、渋谷駅の駅員がおやつと思われるものをハチの鼻先に持っていったところ、左前脚を水平に伸ばし、お手のような仕草をしている場面。同館の松井圭太学芸員によると、飼い主の上野英三郎博士はハチに芸を教えなかったといい「駅員をはじめ、皆にかわいがられる中で、お手のような仕草をするようになったのではないか」と推測している。撮影されたのは1933(昭和8)年12月~34年1月ごろとみられる。
写真を持っていたのは、写っている駅員の息子、五味堅治さん(91)。駅員だった父嘉三郎さんは堅治さんが5歳の時に亡くなったが、写真は家族のアルバムに大切に保管されていた。太平洋戦争末期の45年に自宅は空襲に遭ったが、山梨県に疎開中で、アルバムも一緒だったという。
五味さんは「父とハチの話をしたことはなかったが、写真を見ると、何だか懐かしい気持ちになる」と大切にしてきたという。
同展では、ハチの生涯を紹介するパネル展示もしており、初代ハチ公像の写真と一緒に撮影できるコーナーも設けられている。ハチ自身も参加した34年4月の除幕式の気分を味わってもらうための企画という。
また9月の土日祝日の午後1時から、教育の現場で使われることを目的に58年に製作された白黒16ミリの映画「ハチ公物語」(約50分)を上映している。先着順。
同展は10月1日まで。月曜(祝日の場合は直後の平日)休館。高校生以上100円、小中学生50円。映画鑑賞のみは無料。問い合わせは同館(03・3486・2791)。【柳澤一男】
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