仙台城の石垣の本格的な修復が始まっています。仙台城の石垣は、おととし3月の地震で大きく崩れました。修復方法は江戸時代の伝統工法に現代の技術を融合して、より地震に強い形での復旧を目指しています。

仙台城の石垣は、おととし3月の地震で2カ所合わせておよそ35メートルにわたり崩れ落ちました。石垣の変形や土塀の亀裂、前年の地震の被害も拡大し非常に大きな被害となりました。仙台城跡、本丸の北西側の石垣。今回最も被害の大きい箇所です。

石工職人 江川祐斗さん
「今は石垣の撤去の作業中です。本格的に工事が始まったのは、今年からです」

元の姿に戻すため、まず行われるのが解体です。崩落した石を運び出すだけでなく、一見被害のなさそうな部分も石を取り外し、全体を解体しています。

仙台市文化財課 鈴木亨さん
Q.石垣を解体する理由は?
「見た目では分からないが、3D計測すると赤い部分が前方にせり出しているという変形が見られるので、計測を基に解体ラインを決める」

崩落していなくても、地震で石垣全体が変形している箇所を3D計測の技術で見つけ出し、内側の盛り土を整えた上で積み直すのです。ここで重要になるのが、それぞれの石がどこに積まれていたのか、ということ。その手掛かりとして、東日本大震災からの復旧工事が生かされていました。

仙台市文化財課 鈴木亨さん
「その時のデータとして、石材一つ一つに番号をふってある。このような形で写真を撮ったりとか、そちらを参考に復旧工事をしている」

仙台城の石垣は、2011年3月の東日本大震災でも大きな被害を受けました。この時、修復工事とともに石垣全体の調査を行い、一つ一つの石に番号を振ってデータ化していたのです。

最も古い石垣は、400年以上前、伊達政宗による仙台城築城当時のものとされています。本丸にあった建物は、火災などにより無くなってしまいましたが、石垣を含む仙台城跡は、国の史跡に指定されています。

仙台市文化財課 長島栄一さん
「石垣がだんだん高くなっていくという作り方、それだけで伝統技術を表した文化財なわけです。基本的には江戸時代の人の作り方を踏襲しながら、現代技術を必要なところにだけ入れ行くというのが文化財の考え方」

こちらは、解体した石垣を保管する石材置き場です。ここで、それぞれの石がどこに積まれていたのか、データをもとに照合する作業が行われています。

石材調査工 菅原弦王さん
「写真と図面を照らし合わせ石を探す」

解体と照合が完了すれば、積み直しです。その前に、石垣の内部の修復も行われます。

仙台城の石垣の内側は、盛り土との間に小石が積められています。江戸時代の工法で、雨水の排水に優れていることに加え、小石が地震の揺れをやわらげる役割もしているそうです。

仙台市文化財課 長島栄一さん
「これは『栗石』と言って、地盤が直接揺れた場合、特に盛り土なんかは弱いですから、そういうものの間に緩衝材のような形で入っていて、これも江戸時代の耐震対策の一つです」

数百年前の技術に驚かされますが、修復工事では、さらに耐震性を高める技術も取り入れます。

その一つが、ポリエステル製のネットを石垣の内側に挟みこむ工法です。

仙台市文化財課 鈴木亨さん
「東日本大震災のときに、こちらのネットを入れたんですけど、今回の地震では、この場所は崩れなかった」

おととしの地震で崩落したのは、このネットの補強を行わなかった部分で、その効果は明らか。

仙台市文化財課 鈴木亨さん
「耐震性を持たせた修復じゃないとだめだと思ので、皆さんが安心して歴史を感じ見られるような形で残していきたい」

当時の技術の粋を集めた石垣は、400年を経て、現代の技術を融合させ今にその姿を遺しています。石垣の修復は今年度中に終わる予定です。

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