おととし、神戸市の甲南医療センターで働いていた医師が自殺しました。原因は長時間労働だとして遺族が病院側を訴えた裁判が始まり、病院側は訴えを退けるよう求めました。

【母・高島淳子さん】「このような院長だから晨伍は死んだのだと思いました。このような部長だから、このような上司だから死んだのだと思いました。環境に恵まれず、かわいそうなことをしました」

■時間外労働およそ200時間

甲南医療センターの専攻医だった高島晨伍さん(当時26)はおととし5月に自ら命を絶ち、原因は長時間労働だとして労災認定されました。

労働基準監督署の調査では、高島さんが亡くなる直前の1カ月の時間外労働はおよそ200時間。ある日の当直勤務が終わったのは「40時」、翌日の午後4時まで連続で勤務していたということです。

遺族は病院が「長時間労働を改善しなかった」などとして、病院側にあわせておよそ2億3400万円の損害賠償を求めて裁判を起こしました。

■「医師の労働環境改善…それが息子の望みをかなえること」

22日の裁判で高島さんの母・淳子さんが涙ながらに語ったのは二度と同じような犠牲が出ないでほしいという思いでした。

法廷で淳子さんは「裁判をきっかけに医師の労働環境を改善し、命を救う。それが晨伍の望みをかなえることだと確信しています」と述べました。


■「長時間労働が原因で自殺に至ったことは否認」

一方、病院側は「長時間労働が原因で自殺に至ったことは否認する」「病院にいた時間すべてが労働時間ではなく、専門医になるためなどの自主的な研究=自己研鑽の時間も含まれる」と書面で主張し、訴えを退けるよう求めました。

■「自己研鑽をする暇もないほど業務を課されていました」

裁判後の記者会見で淳子さんは、自己研鑽の時間が取れないほどだったと業務の実態を明かしました。

【母・高島淳子さん】「晨伍は自己研鑽をする暇もないほど業務を課されていました。自分で調節できる本当の意味での自己研鑽ができなくて、苦悩して遭難してしまったのです。世間の方々に命を預ける医師の過労問題を自分事として考えていただきたい、切にこれを願います」


裁判について甲南医療センターは「裁判所のご判断をいただきながら事実関係を探求することが重要であると考えています」とコメントしています。

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