埼玉県内の公立小中学校PTAでつくる「県PTA連合会(県P)」からの脱退が相次いでいる。24年度には上尾や八潮、吉川などの市PTA連合会が離脱。加盟を続けるのは春日部市や宮代町など16市町のみで、加盟率は15%になった。共働き家庭が増え、PTA活動での保護者負担を軽減したい各学校PTAが上部組織での活動を減らし、学校内での活動に重きを置きたい意向もあるようだ。【鷲頭彰子】
近年、保護者の間で「PTA加入は任意」という認識が広がり、平日の活動が困難な共働き家庭も増えている。そうした中で、各PTAが改革のテーマとして取り組むのが会員である保護者の負担軽減だ。学校の備品を購入・寄付するためのバザー開催やベルマーク集めなども止める団体が少なくない。一方、上部組織に所属していると理事会などの出席や研修会参加が、県Pに出向している会員の負担となってきたという。
23年5月に県Pから離脱した久喜市Pは、「コロナ禍で会議を減らし、総会も書面開催にするなど工夫し、負担軽減などの改革を模索してきた。離脱はその流れの一環で、上部組織で求められる会員の動員などをなくしたかった」と理由を説明する。
脱退後は、各学校のPTA関係者と市長を交えた意見交換会を開催するなど市との連携を強化。23年10月に市内の小学校で外壁がはがれ落ちる事故があった際には同小PTAが市長と面談し、学校改修費の予算化などにつながった。市長との意見交換の場はマスコミにも公開し、「見える化」を図ってきた。
活動内容に疑問の声
上部組織による支出の不透明さも、離脱理由の一つだ。保護者が支払うPTA会費は一部が県Pや日本PTA全国協議会(日P)に回る仕組みだが、日Pは22年度決算で5000万円近くの赤字を計上。7月には日Pが発注した外装改修工事を巡り、元参与の男性が背任容疑で逮捕される事件も起きた。
こうした支出や上部組織の活動内容に不満を抱くPTAもある。久喜市Pは、県Pが必要と思われない会合を開くなど会費に見合う活動をしておらず「会員からの理解が得られない」ことを離脱の一因に挙げる。
今年度に県Pを離脱した吉川市Pの役員は、「(上部組織の活動によって)法改正や学校の教職員が増えるなど、子どもにとって良い変化があるならば加盟するメリットもあるが、(県Pが実施する)子育ての講演会などは市内の連合会でもできる」と県Pの活動に疑問を呈する。
数で訴えるメリットも
こうした指摘を上部組織はどう受け止めているのか。県Pの石井大晴会長は、昭和30年代の教科書無償化の運動などを上げ、「会員数が多ければ行政に対しても『総意です』と要望しやすい」と、横のつながりのメリットを強調する。
県内で埼葛地区のPTA連絡協議会長も務めているが、同地区から23、24年度に12市町のうち8市町が埼葛地区Pと県Pを離脱した。石井会長は、埼葛地区のPTA同士が情報交換しやすい環境を整えるとともに、お金のかからない組織に作り直し、離脱した市Pにも参加してもらいたい考えだ。「こちらから声をかけて、またつながっていきたい。埼葛地区でうまくいけば、それをモデルに県Pも立て直していきたい」と話している。
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