LINEのロゴ

通信アプリLINE(ライン)利用者の個人情報が大量流出した問題を受け、総務省は16日、運営元のLINEヤフーに対して2度目となる行政指導をした。同じ問題で、同省が2度の行政指導を行うのは極めて異例のことだ。その理由について、この日会見した松本剛明総務相は「再発防止に向けた抜本的な見直しと対策強化を加速化させるため」と説明した。

3月の総務省による行政指導では、大株主の韓国IT大手ネイバーとの「資本関係の見直し」を求めていた。

これを受け、LINEヤフーは「会社側がサービスの開発などのネイバーへの業務委託を順次、縮小・終了」や、「ネイバーとのネットワークの完全分離を2026年12月までに実施する」ことを盛り込んだ再発防止策を総務省に提出していた。

これに対し、松本総務相は「LINEヤフーは行政指導への対応が不十分だったことを重く捉えてほしい」と批判した。7月1日までに、改めてより具体的な再発防止策を提出するように同社に求めた。

総務省のいらだちを、筆者は十分理解できる。

LINEの利用者は約9600万人。政府や自治体も行政サービスに利用する「公共情報インフラ」ともいえる存在となっている。それが今後約3年間も危険な状態にさらされ続けることを監督官庁として容認できないだろう。

総務省だけではない。政府の個人情報保護委員会は3月28日、LINEヤフーが個人情報保護法に違反しているとして是正勧告を出した。「個人データの適切な取り扱いが組織的にできていなかった」と認定して、4月26日までに改善状況を報告するよう求めた。つまり現時点で、LINEは「違法状態」のまま運用されているのだ。

国がLINEヤフーに対して何度行政指導を出しても再発防止は難しい、と筆者は考える。なぜなら、LINEは「ネイバーの技術やシステムがなければ運用できないほど依存している」(LINEの元技術者)からだ。

LINEが日本でサービスが始まったのは2011年。母体となったのが、ネイバーの日本法人だった。LINEのシステム構築は、ネイバー出身の技術者が主導しており、サービスの運営には、ネイバークラウドのプラットフォームが使われていた。LINEの〝ネイバー依存〟について、総務省の行政指導でも次のように指摘している。

「LINE社における社内ネットワークやシステム構築がネイバー側による技術的支援を大きく受けて複雑に形成され、現在でも、その保守運用等をネイバー側に頼らざるを得ないという関係が存在している」

LINEヤフーは、ネイバーへのシステム依存を減らすために、3年間で約100億円の費用を計上することを想定していた。ネイバーから完全に切り離して、自社システムを開発するには、さらに費用が膨らむことは必至だ。そもそも、いくら費用をかけても技術面で実現できるのか不透明といえる。

少なくとも国が認定したLINEの「違法状態」が改善されたことを個人情報保護委員会と総務省が確認するまでは、LINEを利用停止にしなければならないと筆者は考える。合わせて、政府は「脱LINE」に向けた対策に本格的に乗り出すべきだ。(キヤノングローバル戦略研究所主任研究員 峯村健司)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。