兵庫県の斎藤元彦知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題で、元県西播磨県民局長の男性(7月に死亡)が県の公益通報窓口に通報した直後の4月中旬、知事が元局長を早い段階で懲戒処分できないか検討するよう人事当局に指示していたことが判明した。県議会の調査特別委員会(百条委)が非公開で実施した証人尋問で職員が証言した。
元局長は3月、知事らが絡むパワハラなど七つの疑惑を指摘した告発文書を一部の報道機関や県議に送付。4月4日には県の公益通報窓口に同様の内部通報をした。県は5月7日、「(文書は)核心的な部分が事実でなく、誹謗(ひぼう)中傷に当たる」とする内部調査結果を公表し、元局長を停職3カ月の懲戒処分とした。
8月23日の証人尋問では、人事当局が「公益通報の結果が出るまで処分を待った方がいい」と進言したが、知事ら上層部が受け入れなかったとの証言があったことが分かっている。
百条委の委員によると、この進言は4月上旬にあったが、同月中旬に当時の総務部長が人事当局に「懲戒処分を急ぐのは知事の政治的判断だ」と公益通報の調査結果よりも、懲戒処分のための内部調査を優先するよう指示していたことが新たに判明した。指示は知事の意向で、人事当局は弁護士から「法的には可能」との見解を得たという。
証人尋問では、当時の総務部長が処分案を決める会議(綱紀委員会)でも県幹部3人から公益通報の調査結果を待つよう進言されたが、弁護士の見解を得ているとして「問題ない」と発言したことも明らかになった。こうした趣旨の証言をした職員は、処分を優先させた理由について「『懲戒処分をすれば自身に対する批判の風向きが変わるのでは』と知事が言っているのを聞いた」とも説明したという。
知事は告発文書の存在を把握した翌日の3月21日、片山安孝副知事(当時)ら県幹部と協議し、告発者の特定を含む内部調査を指示。総務部長が22日、人事課に元局長のメールの送受信記録を調査させ、25日には片山副知事が元局長を事情聴取するとともに公用パソコンを調べ、文書のデータを確認したとされる。
公益通報者保護法は「事実と信ずるに足る相当の理由」があるなどの場合、通報者が不利益を受けないよう保護することを規定。報道機関への「外部通報」も認めており、同法の指針には通報者捜しの禁止も盛り込まれている。【中尾卓英、山田麻未】
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