広島豪雨災害が発生して、今年で10年目。
時間の経過とともに薄れていく災害の記憶を高校生たちが未来に伝えていこうと取り組んでいます。匹田先生と高校生たちの取り組みを取材しました。

広島市安佐南区。
JR梅林駅から降りてきたのは、クラーク記念国際高校の2年生たちです。

【広島大学・匹田篤准教授】
「歩いていきます。道が狭いので車や自転車には気を付けてください」

引率するのは、広島大学の匹田先生です。
坂を上り広島市豪雨災害伝承館に向かいます。

広島市安佐南区八木地区。
2014年、8月20日未明、猛烈な雨が、襲いました。
災害関連死をあわせ死者は77人。
住宅の全壊は179棟。
道路や橋などの被害は1079件に上りました。
甚大な被害をもたらした豪雨災害。
八木地区でも、多くの人が亡くなりました。

高校生たちが歩いている坂道は当時、濁流が流れていました。
あれから10年。
いま、被災地には広島市豪雨災害伝承館と名付けられた建物がたっています。
犠牲者への哀悼と鎮魂の場として、さらに、災害を語り継ぐために去年、開設されました。

【広島市豪雨災害伝承館・高岡正文館長】
「その赤い丸のところが結局が全壊になった自宅です。家としては倒壊していなかったので1部でも残っていたので、そこに家族がみんな避難していて助かった」

被災当時の状況を語る館長の高岡正文さん。
高岡さん自身も被災者です。

【広島市豪雨災害伝承館・高岡正文館長】
「あの上にあるのが県営緑が丘住宅。【土砂が】その間を通ってそこにある家を壊して土石流が流れてきた」

山から流れ出した大量の土砂が、住宅密集地を襲いました。
それは、一瞬の出来事でした。

【広島市豪雨災害伝承館・高岡正文館長】
「でもこの時は何が悲しいというか何も考えられませんでした。何が起こったのか良く分からなかった」

みんな、真剣に耳を傾けます。
いま、彼らがやろうとしているのは、災害の記憶の継承です。

【広島大学・匹田篤准教授】
「10年たつということ自体が本当に世代が変わる。そういう人たちが自分事としてどうとらえるか。自分の言葉でどうやって語り継げるかと考えると10年の節目で被災者が何を伝え聞いた人は何を考えるかはとても重要な転換期になっている」

【生徒】
「人々に一番知ってほしいことは何ですか?」
【広島市豪雨災害伝承館・高岡正文館長】
「想像してほしい。自分が住んでいる所自分がいる所にどんな危険がどんなことが起こるのか災害になるのか」

いざというときにスムーズに避難することは難しいと高岡さんは感じています。

【広島市豪雨災害伝承館・高岡正文館長】
「年寄りは特に「私はどこにも行かないここで死ぬんだ」と言うんです。本当に死にたい人はいない。だけど動けない」

館内に展示されているあの日の記憶。
高岡館長の話を聞いた後では、その一つ一つの見え方が違ってきます。
災害が発生した10年前、彼らは小学1年生でした。
その彼らが、災害の記憶を伝承していくのです。

【参加した生徒】
「まずは家族にきょう聞かせてもらった話を伝えて、ちゃんと事前準備をしていかないといけないと思いました」

【参加した生徒】
「周りの人を守れるように自分の兄弟や近所の人を含めて色々な人に今までの豪雨災害の内容も含めて伝えていけたらいいと思う」

【加藤キャスター】
「災害の記憶をどう継承して行くか、まずは身近な家族からというところもありますが、匹田さん社会全体としてどう繋いでいくか、このあたりも考えなくてはいけませんね 」

【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「実際に災害があった広島に住んでいる地元の高校生たちが語りを聴くだけでなく、伝える側になっていく、そうすることで災害を自分事として、より考えてもらうきっかけになるだろうということ。そして、誰に伝えるかということで、今回はターゲットに10年後の高校生、また10年後の自分自身にしました。その人たちにどんなメッセージを伝えたらいいかを3コマ漫画で考えてみようという取り組みをしました 」

【生徒】
「もうちょっと主体的に考えるとか。今日の予定を聞いておくことは大事かも。学校に行って帰りに習い事に行くのかとか。高校生には伝わるかな。響きやすい」

【生徒】
「ここを準備しています。何か危なそうだから早めに避難しよう。ここでは早めに避難して良かったねみたいな」

【加藤キャスター】
「真剣な表情で話し合っていますね」

【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「作ったものを高校生同士がアドバイスし合うことをやっています。アドバイスし合うことで自分が作り手だったり受け手だったり、どんどん先に入れていこうということをやっています」

【生徒】
「まず後悔からスタートするんです。もっとほかの避難経路を調べておけばよかった。他の避難場所を調べようとか。他の道を調べておこうとか」

【加藤キャスター】
高校生たちが取り組む災害の記憶の伝承。
果たして、どんな形になっていくのでしょうか?
改めてこの事業の狙いは?

【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「自分事として捉えるのをどうやっていくか。それを伝える事。そして自分が伝える側になった時に相手は誰なのか、そしてどういう場所でどういうメッセージを伝える事がいいのか。高校生たちの言葉を借りると『刺さる』と言い方をしますが、どういう言葉が刺さるのかということを勉強する場にもなります。彼ら自身にも伝承者になってもらいたい。そういう気持ちがあります」

Q:取り組みは現在どう?
【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「VTRにもあったようにメモ書きの状態なんです。夏休みに入ってしまったので、夏休みの後に表現の練習をして仕上げをして行きたい」

さて、伝承館には、松井憲副館長がいらっしゃいます。
松井さん、伝えていく方法や難しさがあると思いますが、この取り組みをご覧になっていかがですか?

《中継》
【広島市豪雨災害伝承館・松井憲副館長】
「とてもいいですね。まず、我々としては防災減災を皆さんに理解していただいて取り組んでもらう。それがまず一番大事。ここで勉強していただきたいのは、そういった人たちと合わせて被災者の人たちがどういうふうに自分たちの街を作っていこうとしてるのか。そういったものを見ていただく。合わせて自分の命を自分で守っていくためのスキルや技術をここで身につけていただきたい」

松井さん、特に高校生という若い世代が取り組んでいるという点は10年、20年先を考えると非常に大きなポイントになりますね。

【広島市豪雨災害伝承館・松井憲副館長】
「そうですね。高校生の人たちがこれからそういうことを考えながら、自分の生活の中で、将来いろんなところへ散っていくわけです。その場所で自然のリスク、驚異を見つけて自分がどうその中で生きて行くか、そういったことを自分たちで考えられるようになってくれるといいですね」

改めて自分たちが住んでいる場所がどのような場所なのかを知って、そして身近な周りの人を助ける。そういう取り組みになればいいかなと思います。

松井さんにお話を伺いました。
ありがとうございました

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