「頂き女子りりちゃん」などと名乗っていた渡辺真衣被告。判決が22日に言い渡される(本人のユーチューブから)

「結婚ってわなだよ。結婚すると女は全部、男に権利を奪われて離婚も自由にできないって誰かに教えてもらった? 教えてもらってないよね?」

4月から始まったNHKの連続テレビ小説「虎に翼」のワンシーンだ。当時の民法では、結婚した女性は「無能力者」とされ、夫の管理下に置かれていた。主人公の寅子(ともこ)が離婚を巡る裁判を傍聴した際に、そうした結婚制度について疑問を口にする。

舞台となった昭和初期から約90年後の現代。結婚そのものをエサにわなを仕掛ける犯罪が後を絶たない。

「18歳になったら俺もホストをやめるから結婚しよう」

当時15歳だった少女を店に立ち入らせ、シャンパンを提供したなどとして、警視庁が風営法違反の疑いで逮捕したホストの男が少女に話していた言葉だ。ホストが女性に結婚をちらつかせ、高額の売掛金などを課すケースは枚挙にいとまがない。

「結婚」というワードにだまされるのは若者だけではない。

近年、猛威を振るっている「国際ロマンス詐欺」。交流サイト(SNS)などを通じて恋愛感情を抱かせ、仲が深まると、「一緒に生活するためにお金を増やそう」などと投資に誘導する。ロマンス詐欺の被害者は男性は50~60代、女性は40~50代が半数以上を占める。男女とも被害に遭っている。

「頂き女子りりちゃん」を名乗る女が恋愛感情を利用して金をだまし取るための指南書を販売し、自身も複数の男性から金を詐取したとされる事件も、婚活アプリを通じて真剣に結婚を望む男性がターゲットにされた。

だます側が悪いのは当然だが、付き合いが浅い、会ったこともない、金銭でつながっているなど、冷静に考えれば、結婚に至るような関係性ではない。

ただ、SNSやマッチングアプリを通じて簡単に出会え、別れるのも「ブロック」して情報を遮断すれば簡単にできる現代。誰かと永遠につながることができるかもしれない「結婚」という言葉は魅力的に感じるのかもしれない。自戒を込めて甘い言葉の裏に潜むわなには注意したい。

大渡美咲

平成18年入社。福島支局、東北総局、東京社会部で東日本大震災を取材し、令和5年11月から警視庁キャップ。

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