熊本県の球磨川支流の川辺川に国が建設予定の国内最大規模の流水型ダムを巡り、水没予定地がある五木村の木下丈二村長が21日、村民集会を開き、ダム建設の受け入れを正式に表明した。住民の一部からは反発の声も出たが、目立った混乱はなかった。構想から半世紀以上。賛成派と反対派による地域の分断、その後の計画の方針転換など、翻弄(ほんろう)され続けた村の「同意」を受け、計画が本格化する。
集会は村中心部の小学校体育館で開催され、村民約140人が集まった。木下村長はダムを巡る経緯を振り返ったうえで「水没地の利活用策などを具体的に考えていくためにも、本日をもって流水型ダムを前提とした村づくりにかじを切っていきたい」と説明。判断理由として、国や県からの100億円規模の財政支援など、村の振興策で「最大限の回答」があった点や、環境影響評価(アセスメント)で、環境に配慮した手続きが進んできたことなどを挙げた。
質疑応答で村民からは「今日初めて村長の思いを聞いた。住民同士で議論する時間を持つべきではないか」という意見が出る一方で「早く決断を示してほしかった。振興策を進めてほしい」といった声も上がった。木下村長は「ダムを前提としなければ、具体策も進んでいかない。協力してほしい」と理解を求めた。
終了後、木下村長は記者団の取材に、長年にわたって公共事業に振り回されてきた地元の首長として「大きな公共事業は、住民の貴重な財産を提供してもらい進んでいく。国は責任を持って小さな村や国民を路頭に迷わせないようにお願いしたい」と語った。
熊本県の木村敬知事は「新たな流水型ダムを含む『緑の流域治水』の推進について、流域の皆さまの理解が深まるよう国と連携して取り組むとともに、五木村の振興をスピード感を持って進める」とコメントした。【山口桂子、西貴晴】
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