宮崎県沖の日向灘を震源とする最大震度6弱の地震を受け、国が初めて出した南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)は15日で終了した。ただ、日向灘を調査してきた京都大防災研究所宮崎観測所(宮崎市)の山下裕亮助教(観測地震学)は、震源域が今回の地震で破壊され切らなかった「割れ残り」が生じている可能性があると指摘。大規模地震が再び起こる可能性もあるとして警鐘を鳴らす。
今回の地震は8日午後4時42分ごろ、日向灘の深さ31キロのプレート境界で発生し、マグニチュード(M)は7・1。宮崎県日南市で最大震度6弱となり、津波も宮崎港で50センチ、日南市油津で40センチなど和歌山県串本町から鹿児島県・種子島にかけての太平洋沿岸で観測された。国の南海トラフ地震の想定震源域内だったことなどから、初めて臨時情報が出された。
山下助教が注目するのは、1996年に日向灘で発生した2度の地震と今回の地震との関連性だ。
日向灘は約30年周期でM7クラスのプレート境界型地震を繰り返す傾向にある。96年は10月(M6・9)と12月(M6・7)と2度、地震が発生していた。今回の地震は96年12月の地震と震源が近く、96年10月の地震を含めた一帯の震源域が今回の地震で一気に破壊された可能性もあると発生当初は考えられていた。
ただ、余震の分布やM5クラスの余震の少なさなどから、96年10月に発生した地震の震源域が今回の地震で破壊されていない可能性が高いことが判明。山下助教は「いずれM7程度の地震が再び発生する可能性がある」と分析する。
日向灘でM7クラスの地震が再び起きると、臨時情報が再び出される可能性もある。山下助教によると、いつ起きるか予測することは不可能といい「96年のように2カ月ほど間を空ける場合もあれば、年単位になる可能性もある」という。
日向灘では通常の地震よりもゆっくりと断層がずれる「スロー地震」の活動も活発化しており、山下助教は「スロー地震との相互作用で、M8クラスが発生する可能性もある」と指摘。また、今回の宮崎市沖とは別に、日向灘では県北部沖でも68年に津波を伴うM7・5のプレート境界型地震が発生している。同規模の地震はその後起きておらず、南海トラフ地震の「心臓部」の四国沖にも近いことから、山下助教は「起きた場合、社会的な影響は更に大きくなると考えられる」とみる。
初の巨大地震注意の期間は終わったが、山下助教は「期間が終わっても南海トラフ沿いで巨大地震が発生しなくなったわけではなく、発生する確率は今日よりも明日、明日よりも明後日と時間がたつにつれて上昇する。今回の地震を人ごとと考えず、日ごろの地震対策と地震が起こった時の行動を改めて見直してほしい」と日ごろからの備えを呼び掛けている。【塩月由香】
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