千葉県内の犯罪被害者の遺族が集う自助グループ「あおぞら」は、思いを広く知ってもらおうとメッセージ集を作成した。同グループの活動をサポートする公益社団法人「千葉犯罪被害者支援センター」の担当者は「理解のある社会になってほしい」と話している。
同グループは2012年にスタートしたが、参加者が集まらず、継続的に活動できなかったことから休会状態が続いた。しかし、自助組織が必要との声が上がったことなどから23年4月に活動を再開した。
メッセージ集はA5サイズの冊子で33ページ。寄付金で3000部を作成した。メンバー8人のうち5人が寄稿した。
同センター理事の澤田美代子さん(67)は16年前、次男の智章さん(当時24歳)を失った。智章さんは面識がない19歳の少年に車で故意にはねられた。加害少年は知的障害を持ち、保護観察を受けていたといい「誰でもいいから人を殺し、父親に迷惑をかけてやるとの目的で車を凶器にした。我が子の命、将来が奪われた無念は一生抱えていかなければいけない」と悲痛な心境をつづった。一方で「この犯罪のひどさを風化させないためにも経験を伝え、被害者が減っていくことにつながれば」と思いを込めた。
30年前、米国での銃撃事件で六つ年上の兄、伊東拓磨さん(当時19歳)を亡くした秀彦さん(43)は「それまで単純に信じていた、頑張れば報われる、という価値観は揺らぎました」と振り返った。ぜんそくでつらい幼少期を過ごした兄は、好きだった映画に希望を見いだして「誰もが楽しめる映画を作りたい」と米国に留学。その時に事件に巻き込まれた。
秀彦さんは2005年に弁護士になり、犯罪被害者支援に取り組んできた。「私の弁護士人生は兄あってこそのもの。自分にしかできない活動をし、犯罪被害者の方々が希望を持てるように尽力していきます」と誓った。
同センターで相談員を務める山本陽子さん(51)と磯村敬子さん(53)は「犯罪被害に遭うのは決して特別な人ではなく、誰の身にも突然起こる。被害者への優しいまなざしをお願いしたい」と話す。
冊子は県内の警察署や市役所などに配布され、関係者で活用しているほか、閲覧できる場所もある。刑務所にも配布している。メッセージ集の入手、問い合わせは同センター(043・225・5451)。【林帆南】
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