撤去か存続かで揺れる熱田空襲の犠牲者を慰霊する地蔵=名古屋市熱田区で2024年6月22日午前11時半、真貝恒平撮影

 戦後79年となり、全国に建てられた戦没者慰霊碑は老朽化が進んでいる。維持管理を担ってきた遺族らの高齢化も重なり、存続の危機に立つ碑も多い。戦争の記憶を伝承する役割も担う慰霊碑をどう守っていくかが、いま大きな課題となっている。

 厚生労働省によると、民間が建立した戦没者慰霊碑は国内に1万6235基(2019年4月末時点)ある。そのうち、ひびが入ったり倒壊の恐れがあったりして管理状況が「不良」「やや不良」とされる慰霊碑は計780基に上る。一方で、管理者がわからない慰霊碑は1495基あり、全体の約1割を占める。

 民間の慰霊碑の多くは、地域の遺族会や住民が中心となって維持管理を担ってきたが、高齢化が進み、後を継ぐ担い手も不足している。管理の手が行き届かず、劣化により倒壊などの危険性が指摘される慰霊碑も増えている。

 こうした動きを受け、国は2016年度、自治体が慰霊碑を移設、撤去する際の補助制度を創設。「建立者や管理者が不明」「倒壊の恐れがある」などの条件に該当すれば、経費の半額を補助するとし、当初25万円だった上限を、19年度には50万円に引き上げた。厚労省によると、制度を活用して移設や撤去された慰霊碑は計26基(今年3月時点)あるという。

 全国の戦争遺跡の調査、研究に取り組む「戦争遺跡保存全国ネットワーク」の菊池実共同代表は、「慰霊碑などがなくなると戦争の記憶が薄れてしまい、次の世代に伝えることが難しくなる」と危機感を示す。「維持には多額の費用が必要なケースもあり、行政による支援のほか、民間によるクラウドファンディングなどで存続への道を探っていくことが求められる」と指摘している。【真貝恒平】

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