小林製薬が製造・販売した「紅麹(べにこうじ)」成分のサプリメントを摂取した人に健康被害が広まっている問題を受け、消費者庁は19日、機能性表示食品制度のあり方を巡る専門家検討会の初会合を開いた。健康被害の報告体制が整っていないことや、小林製薬のサプリに米国で医薬品として承認されている物質が含まれていることなどの問題点が指摘された。
検討会の意見を踏まえ、政府は制度の信頼性を確保するためにどのような改善が必要か、5月末をめどに方向性を取りまとめる。事業者側から行政機関への報告義務のルール化や、製造過程での安全性確保などが焦点となりそうだ。
検討会は中川丈久・神戸大大学院教授を座長に医師や薬剤師、栄養士の団体関係者ら9人で構成する。初会合では、機能性表示食品の法的な位置付けや届け出の流れなどを確認した。
政府のガイドラインでは、健康被害が発生した際には「入手した情報が不十分であっても速やかに行政機関に報告することが適当」としているが、小林製薬の紅麹サプリを巡っては、最初の腎疾患の症例報告から製品の自主回収まで2カ月以上かかったことが問題視され、岐阜医療科学大の宗林さおり教授は「(ガイドラインには)どの程度の症状があったとき何日以内に報告、という規定がない」と指摘、行政が情報を確実に収集できる体制の必要性を訴えた。
また、紅麹原料をつくっていた同社の大阪工場(大阪市、昨年12月に閉鎖)は製造・品質管理に関する指針「GMP(適正製造規範)」の認証を取得していなかったことを受け、委員からは「GMPがきちんと働いていれば、(異物が混入しても)途中でおかしいと把握できるはず」とする声もあがった。
さらに健康被害が報告されている同社のサプリ「紅麹コレステヘルプ」には米国で医薬品として承認された「ロバスタチン」と同じ物質「モナコリンK」が含まれることも議題となり、国立医薬品食品衛生研究所の合田幸広名誉所長が「ロバスタチンのような医薬品成分は、食品表示(の製品)としては使えない」と述べるなど、製品自体の問題点も議論された。
一方、藤田医科大の三浦公嗣特命教授は「機能性表示食品制度には(安全性などの)情報を行政が把握できるメリットもある」と強調。「規制を強化することで、その他の健康食品に(製品が)流れ、規制のかからない食品が増えてしまうおそれがある」と注意を促した。(牛島要平)
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