米軍による長崎への原爆投下から79年。長崎市の平和公園で9日、平和祈念式典が開かれた。岸田文雄首相のあいさつは次の通り。
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本日ここに、被爆79年目の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に当たり、内閣総理大臣として、犠牲となられた方々の御霊(みたま)に対し、謹んで、哀悼の誠をささげますとともに、今なお、後遺症に苦しむ方々に対し、心からのお見舞いを申し上げます。
今から79年前の今日、一発の原子爆弾により一木一草もない焦土と化したこの街が、市民の皆様の御努力によりこのように美しく復興を遂げたことに、私たちは改めて、乗り越えられない試練はないこと、そして、平和の尊さを強く感じる次第です。
長崎及び広島にもたらされた惨禍を決して繰り返してはなりません。この信念の下、「核兵器のない世界」の実現に向け、現実的かつ実践的な取り組みを着実に進めることこそが唯一の戦争被爆国である我が国の使命です。そして、核軍縮を巡る国際社会の分断の深まりやロシアによる核の威嚇等、核軍縮を巡る情勢が一層厳しさを増している今だからこそ、「長崎を最後の被爆地に」と世界へ強く訴え続けてまいります。
「核兵器のない世界」を実現するための道がいかに狭いものであろうとも、厳しい現実から理想への道のりを歩むため、我が国は、非核三原則を堅持しつつ、「核兵器のない世界」の実現に向けた国際社会の取り組みをリードしてまいります。
この上で基礎となるのが、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石である核兵器不拡散条約(NPT)です。昨年、ここ長崎では、「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議が開催されました。次回NPT運用検討会議において有意義な成果を得られるよう、国際賢人会議の議論等も踏まえ、核兵器国・非核兵器国が共に取り組むことができる具体的な措置を見いだす努力を続けてまいります。
この点、世界が核兵器数の減少傾向が逆転しかねない瀬戸際に立つ中、これを防ぐためにも、核兵器用の核分裂性物質の生産禁止条約(FMCT)の推進は重要です。本年立ち上げた、地域横断的なグループであるFMCTフレンズの枠組みに、私自身、先頭に立って主体的に関与してまいります。
これまで我が国はG7やさまざまな機会を捉え、世界の指導者や若者に、被爆地長崎及び広島の訪問を促し、被爆の実相に触れていただきました。被爆の実相を世界の人々に伝え、正しく理解していただくことは、核軍縮に向けたあらゆる取り組みの原点として重要です。今年は、日本政府の拠出により国連が立ち上げた「ユース非核リーダー基金」のプログラムを通じ、未来のリーダーが被爆地を訪れます。このような取り組みを通じ、被爆者の方々の協力も得ながら、被爆の実相への理解を促す努力を続けてまいります。
被爆者の方々には、保健、医療、福祉にわたる支援の必要性をしっかりと受け止め、高齢化が進む被爆者の方々に寄り添いながら、今後とも、総合的な援護施策を推進してまいります。特に、原爆症の認定について、一日も早く結果をお知らせできるよう、できる限り迅速な審査を行うよう努めてまいります。
被爆体験者の方々についても支援に努めており、昨年度も事業の拡充を行ったところです。
結びに、市民の皆様のたゆみない御努力により、「国際文化都市」として見事に発展を遂げられた、ここ長崎市において、核兵器のない世界と恒久平和の実現に向けて力を尽くすことを改めてお誓い申し上げます。原子爆弾の犠牲となられた方々のご冥福と、ご遺族、被爆者の皆様、並びに、参列者、長崎市民の皆様のご平安を祈念いたしまして、私のあいさつといたします。
令和6年8月9日
内閣総理大臣 岸田文雄
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