宮崎県で最大震度6弱を観測した8日の地震発生をきっかけに初めて南海トラフ巨大地震の臨時情報が発表された。専門家による評価検討会は「巨大地震注意」と判断。大地震はどのようなメカニズムで起こり得るのか。何に注意が必要となるのか。
南海トラフ巨大地震は政府が防災対策に取り組む大地震の中で、最も深刻な被害を見込んでいる。
新たな被害想定や被害軽減に向けた目標については現在、政府の中央防災会議の作業部会で検討が続いている。政府が2012~13年に公表した被害想定では、静岡県から宮崎県にかけて10県で最大震度7を観測し、津波は高知県で高さ34メートルに及ぶとしている。
最悪の場合として、死者32万3000人、経済被害220兆3000億円と推計。19年には、耐震化の進展などを理由に死者23万1000人、経済被害は213兆7000億円とする再試算を示した。
内閣府の有識者検討会が12年に公表した南海トラフ巨大地震の想定はM9・1で、11年に発生した東日本大震災のM9・0を上回る。これを踏まえた中央防災会議の被害想定では、最大震度7を10県で観測するだけでなく、震度6強から6弱の揺れも大阪など21府県で起こると予想。関東から九州にかけての太平洋沿岸部にある計100市町村で、10メートル以上の津波が発生するとした。
被害想定を踏まえ、国レベルで進められた代表的な防災対策として挙げられるのが「防災対策推進地域」と「津波避難対策特別強化地域」の指定だ。
政府は14年、被害が予想される茨城県から沖縄県にかけての29都府県707市町村を推進地域に指定し、中でも津波の被害が甚大になると予想される14都県139市町村を特別強化地域とした。
特別強化地域は国の負担割合が引き上げられる特例の対象で、住民が一時的に逃げ込める「津波避難タワー」の建設や避難路の整備などの対策を促進する。
大きな災害の発生に備え、事前に被災後のまちづくりを念頭に置いた防災対策を取る「事前復興」の考え方も重視されている。
95年の阪神大震災を契機に広まった発想で、国土交通省が18年に作成したガイドラインは、事前復興を念頭に置いた地域防災計画の作成を各自治体に求めた。南海トラフの被害が想定される地域でも、あらかじめ公共施設を高台に移転したり、仮設住宅の建設場所を決めたりするなどの取り組みは広がっている。【島袋太輔、安藤いく子】
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