日本語指導が必要な児童生徒数の推移

 公立学校に通っている児童・生徒のうち、日本語の指導を必要としている小中高校生は2023年度時点で6万9123人に上り、過去最多となった。新型コロナの入国制限が解除され、外国人労働者が急増したことなどが背景にあるとみられ、10年前から倍増した。想定を上回るペースでの増加に現場の支援は追いついておらず、分数や足し算引き算など基礎的な学力を身につけられないまま進級する子どももいる。

 「日本語学級の定員を超えるペースで次々と来日しており、指導が追いつかなくなっている」。東京都内の中学校で日本語学級の指導を担当する教員は顔を曇らせる。文部科学省の調査によると、都内で日本語指導を必要としている児童・生徒は23年度は6312人。2年前の前回調査から1666人増え、1・36倍となった。

多文化共生センター東京が土曜日に開く日本語教室には、多くの小中学生が訪れる=同センター提供

 この教員が勤務する中学校では、日本語の初期指導をするため日本語学級を設置し、サポートしてきた。今年度は既に定員を上回る子どもが通学しており、1人あたりの指導時間を減らしたり、途中で指導を打ち切って通常学級に行かせたりせざるを得ない状況になっているという。

 日常会話は比較的早くできるようになるため、周囲からは日本語が分かるようになったとみられがちだ。だが、連立方程式や因数分解など中学生が習う教科の内容を正確に理解するには、日本語をより深く学ぶことが欠かせない。「磁石が鉄にくっつくというような基本的な知識が抜けていたり、分数や2桁以上の足し算引き算でつまずいたりしたまま中学生になっている生徒もいる。きちんと支援しないといずれ授業についていけなくなる」と懸念する。

 国の対応も後手に回っている。文科省が外国籍児の受け入れから卒業後の進路まで一貫した支援体制の構築を目指し、自治体向けに実施している「きめ細かな支援事業」には24年度、前年度より20多い197自治体から応募が殺到。文科省は一律に補助額を減らさざるを得ず、担当者は「予算額を超える申請で、ご希望にお応えできなかった」と釈明する。

 そもそも、日本語指導を必要としているか判断する基準は学校任せで、統一されていないという課題もある。今回の調査では、97%が「学校生活や学習の様子」、39%が「来日からの期間」を基準にしたと回答し、客観的な言語能力の測定基準で判断していた学校は21%にとどまった。

 また、小中学校に通っている外国籍児のうち日本語指導を必要としている児童・生徒の割合でも、愛知県は6割の子どもが支援を必要としていたが、大阪府では3割、東京都では2割にとどまった。地域間で大きな差が生じている現状について、子どもや若者の日本語教育を手がける多文化共生センター東京(荒川区)の枦木(はぜき)典子・代表理事は「本当は日本語指導が必要なのに、判断基準がはっきりせず、見落とされている子がいるのでは」と分析している。【奥山はるな】

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