介護していた90歳の父親と心中しようとして、承諾を得て殺害した罪に問われていた61歳の息子に対し、大阪地方裁判所は執行猶予と保護観察のついた、有罪判決を言い渡しました。

大阪市港区で理容室を経営する王森浩嗣被告(61)はことし5月、パーキンソン病で介護していた父親の王森一民さん(当時90歳)と心中しようと考え、承諾を得て、ロープで首を絞めて殺害した罪に問われています。

■自身も「耐え難い体調不良」に苦しみ 父親の介護負担を弟にはかけられないと心中決意

裁判で起訴内容を認めていた王森被告。

判決などによると、ことし1月頃から自身の左手や左足のしびれ、両足の倦怠感や耐え難い首の痛だるい感じ、脳を押さえつけられるようなもやっとした感じなど自身も体調不良に苦しんでいました。

通院するなどしていましたが、症状はひどくなる一方で、5月初めころにはこの症状から逃れるため、自殺を考えるようになったということです。

しかし自分が自殺した後、残された弟に介護などの負担がかけられないなどと思い、父親と心中しようと考えたと裁判で説明していました。

■検察「相応の犯行を準備 弟にも相談せず短絡的」などと懲役3年求刑

検察側は、「被告は、首を絞めるためのロープや被害者に飲ませるための睡眠薬、日本酒を準備し、これらの道具を事前に理容室に運び込んだ上、被害者をマイナンバーカード用の写真の撮影の名目で同所に連れ込み、犯行に及んでおり、相応の準備行為が認められる」と指摘。

そして、「弟と相談することもなく、犯行を決意したその経緯は短絡的であり、被害者の承諾があったとは言え、その生命を奪うことは許されない」などとして懲役3年を求刑していました。

■大阪地裁「自殺に道連れ」と指摘も「被害者に謝罪 更生の意欲」と執行猶予と保護観察つける

大阪地裁(末弘陽一裁判官)は、5日の判決で「父親の承諾はあったものの、被告も認めるように、自殺に被害者を道連れにした側面があり、他者の生命を軽視した短絡的な犯行」と指摘。

そのうえで「犯行後に自ら119番通報し、救急隊員に自ら手をかけたと述べ、裁判でも真摯に反省し、被害者に謝罪の気持ちを示していることや、自身の体調の悪さが回復しつつあり、理容師として更正する意欲を示している」などとして懲役3年、執行猶予4年(その期間の保護観察付き)の判決を言い渡しました。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。