ふるさと納税の寄付受け入れ額を年々伸ばしている和歌山県紀の川市。2022年度は県内市町村で4番目に多い約13億8700万円となり、23年度は約1・4倍の約19億500万円に達した。学校給食の無償化や移住者への奨励金などに充てる貴重な財源となっている一方、返礼品に対する苦情も寄せられている。市は6月、返礼品の大半を占める桃を対象に「返礼品覆面調査(返礼品Gメン)」と銘打った抜き打ち調査を実施。寄付を集めるカギとなる返礼品の質や魅力の向上を目指している。【藤原弘】
6月26日夕、市役所本庁舎の1室に、市内の農園など6事業者の桃7品がテーブル上に並べられた。市が寄付者を装い、事業者から受け取った返礼品だ。
市職員やJA紀の里職員、運送業者の計10人が「Gメン」として調査。桃の傷みの有無や梱包(こんぽう)状態、箱に入れられた案内書の内容などについて、調査項目の一覧表と照らし合わせながらチェックした。市によると、「追熟(常温で置いて完熟させる)の必要があるのに説明がない」「問い合わせ先が書かれていない」などの指摘があったという。
結果は事業者にフィードバックされる。紀の川市桃山町を主産地とするブランド「あら川の桃」を生産する「マルミ農園」の代表、宮村貞好さん(75)は、市職員から報告を受け、「(返礼品について)『これぐらいだったらいいか』という考えはいかん。(抜き打ち調査があると)出す方も緊張するから良いのでは」と肯定的だ。
覆面調査を始めるきっかけは返礼品へのクレームだった。22年度には返礼品の桃を受け取った人から約150件の苦情が市に寄せられ、「水気がない」「香りがいいのに桃の味がしない」といった内容が多かったという。寄付者から送り返された桃を追熟して食べるとおいしかったというケースもあり、担当する市職員の西川昌克さん(35)は「食べごろなどが分かる案内書をきちんと入れれば、状況が変わるのではと思った」と振り返る。
西川さんは、「市が返礼品のルールを押しつけて画一化するのではなく、事業者がそれぞれ工夫して産地としてのレベルの向上につながれば」と覆面調査の効果に期待している。
紀の川市の寄付受け入れ額は、18年度は約5800万円だったが、23年度は19億円超となり30倍以上に増加した。市内事業者の販路拡大や産業振興、税収の増加のためには、安心安全な返礼品を届け、寄付のリピーターを増やすことが重要だ。市は今後、ミカンなどを対象に同様の調査をする予定という。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。