三重県警で現在唯一の女性現場指紋係員として働く池田詩乃さん=津市栄町1の三重県警本部で2024年7月12日、渋谷雅也撮影

 指紋や足跡など事件現場に残されたわずかな情報から犯人逮捕に向けた手がかりを探る鑑識作業は、初動捜査で重要な役割を担う。熟練した技術や経験が必要とされる中、三重県警察本部刑事部鑑識課で4月に20代女性としては40年ぶりの現場指紋係員が誕生した。池田詩乃さん(24)は現在8人いる係員のうち唯一の女性で「県民の安心安全な生活のために一つでも多く犯罪捜査に携わって解決していきたい」と事件解決の一助になるため、日々指紋と向き合っている。

 殺人や窃盗などの事件現場で採取された指紋を試薬などで鮮明にし、顕微鏡やルーペを使って指紋の線の端や分かれ目などの特徴を把握する作業に取り組んでいる。犯罪歴などがある人物が登録されたデータベースと照合し、一致する部分があるか、目を凝らしている。

 実際の指紋は不鮮明だったり、欠けていたりするケースも多い。現場から採取された一つの指紋に対して数十件と見比べるだけで、3時間は過ぎてしまうという。「採取された指紋に傷が付いていることがあるほか、それぞれの指の形や力の入れ具合で指紋の付き方がだいぶ違うので見極めるのが難しい。だけど、鑑定結果が出た時は、達成感がある」と笑顔でやりがいを語った。

 幼い頃から「科捜研の女」や「相棒」などテレビの警察ドラマが大好きで、事件現場の第一線で活躍する警察官に強い憧れを持っていた。大学生の時に地元の三重県警の就職説明会に参加すると、手にした募集要項に警察官のほかに、警察事務官の職務に犯罪鑑定が紹介されていたことに興味が引かれた。

 大学では生命科学を専攻していた。ネズミを解剖してDNAの解析を研究するなど化学の知識もあり、細かな作業も得意だった。「最後の最後まで警察官と迷ったけど、自分には適性があると思った。警察官の方と一緒に事件を解決することができる」と警察事務官を選んだ。採用試験に合格し、2022年から名張署で勤務した後、今年4月から念願の鑑識課に配属された。

 三重県警で女性の現場指紋係員は21年に1人が定年退職して以来、不在だった。当初は「鑑定業務に興味がある若い女性が珍しく、先輩たちに驚かれました」と振り返り、「男性が多いけど女性だからということで困ったことはない。男性の方でも器用な人は多いし、先輩たちから教えてもらっている」と周りのアドバイスを受けながら、スキルアップに努めている。

 まだ、自らの鑑定によって犯人逮捕につながった経験はないという。「『難しい事件に当たった時に、この人だったら安心して鑑定してもらえる』と言ってもらえるような鑑定官になりたい」と目標を持ち、意気込みは増していく。【渋谷雅也】

池田詩乃(いけだ・しの)さん

 津市出身。名張署では会計課で拾得物の管理などを2年間担当した。趣味は野球観戦。休日はテレビでプロ野球中継を見て気を休める。

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