2025年大阪・関西万博(4月13日~10月13日)の会場となる大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で、30年秋ごろの開業を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)について、万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)が会期中の建設工事を見合わせるよう大阪府の吉村洋文知事に求めていたことが3日、分かった。複数の関係者が取材に明らかにした。
政府は23年4月、国内で初めて大阪府・市のIR整備計画を認定。万博会場に隣接する約49万平方メートルの敷地にカジノや三つのホテル、国際会議場などを整備する計画で、米MGMリゾーツ・インターナショナルの日本法人やオリックスなどが出資する大阪IR株式会社が同年9月、府と実施協定を結んだ。
予定地では現在、事業者が液状化対策などの土壌対策工事を進めており、市が788億円を上限に費用を負担する。今夏にもIR本体の準備工事に着手。本体工事の着工は、万博が開幕する25年春ごろを予定している。
しかし、関係者によると、博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長がIR工事の騒音や景観への影響を強く懸念。ケルケンツェス氏の意向を受けた万博協会の十倉雅和会長(経団連会長)が7月25日に吉村知事と直接面会し、万博会期中の工事中断を求めたという。大阪IRの関係者は取材に「万博とIR工事が重なることは初めから分かっていた話だ」と一蹴。府市の幹部も「なぜ今更こんな話になるのか」と戸惑いを隠さない。
IR誘致を推進した吉村知事は従前「さまざまな条件を想定した工事車両のシミュレーションでも十分対応できる」と述べるなど、万博とIR工事の並行は織り込み済み。横山英幸市長も「万博中は騒音などについて事業者と調整し、(万博とIR工事の)両方が成り立つように連携を密にしていく」との考えだ。府市は今後、事業者と具体的な対応を協議する方針。
府と大阪IRの実施協定では、事業者が事業の前提条件が整っていないと判断した場合、26年9月までは違約金なしで撤退できるとする「解除権」が設定されている。【東久保逸夫、鈴木拓也】
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