航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県新富町)の周辺住民178人が、自衛隊機の夜間や早朝の飛行差し止めと騒音被害への国家賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁宮崎支部(西森政一裁判長)は2日、172人分の過去の被害を認めて国に計約1億2000万円の支払いを命じた1審・宮崎地裁判決(2021年6月)を変更し、原告全員に賠償するよう命じた。将来の被害に対する請求と飛行差し止めは1審に続き、退けた。弁護団によると、新たな賠償総額は約2億2000万円。
原告は、航空機の騒音の程度を示す「うるささ指数(W値)」が75~95の地域に住む新富町と同県西都(さいと)市、宮崎市の住民。
高裁は騒音被害について「受忍限度を超えている」と指摘した1審判決を踏襲した上で、さらに救済範囲を拡大した。1審は国の主張に沿って6人を対象外としたが、高裁は「75Wを超える騒音被害を受けた」と認め、原告全員に慰謝料を支払うよう国に命じた。また、1審は住居の防音工事が施された部屋数などに応じて慰謝料を10~30%減額したが、高裁は「(防音工事は)被害の根本的な解消を実現するものではない」とし、一律10%に減額幅を縮小した。
弁護団と原告団は判決後に出した共同声明で「被害の実態を伝え続けた努力が一定の実を結んだ」と評価。一方、飛行差し止め請求が認められなかったことについては「基地強化の動きもあり、根本的解決から目を背けている」と批判し、上告する意向を示した。
防衛省九州防衛局は「判決内容を慎重に検討し関係機関と十分調整の上、適切に対応していく」とのコメントを出した。【塩月由香、下薗和仁】
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