安安連の冒頭、「良き隣人でありたい」とあいさつする米軍経ケ岬通信所のダニエル・クウァント司令官(右)=京丹後市役所丹後庁舎で2024年7月31日午後2時5分、塩田敏夫撮影

 弾道ミサイルを探知・追尾するXバンドレーダーを配備した米軍経ケ岬通信所(京都府京丹後市丹後町)の「第39回安全安心対策連絡会」(安安連)が31日、市役所丹後庁舎であった。基地建設に際し、防衛省は米軍関係者の集団居住・通勤を約束したが、基地発足から10年になろうとする中でも実現していない。市は住民代表らが参加した安安連の場で改めて約束の実行を求めた。

 米軍関係者の集団居住・通勤は、基地発足前に防衛省が明言した数多くの約束のひとつだ。軍人は基地内の隊舎で生活し、軍属は集団居住・集団通勤すると繰り返した。しかし、基地建設が始まって1年もたたないうちに約30人が個人で契約したアパートなどに居住していることが判明。府などが抗議する事態となった。

 その後、基地の警備会社の従業員は市内に新しく建設された集合住宅で集団居住・通勤を始め、軍人も基地内の隊舎に引っ越した。しかし、レーダー運用会社の従業員は市内のアパートなどに個人でバラバラに居住しているとみられるが、実態はつかめていない。

 この日の安安連では、中西和義副市長がレーダー運用会社従業員の居住実態を尋ね、「安全・安心の確保」の観点から集団居住・通勤の速やかな実施を求めた。これに対し、防衛省は居住実態については具体的に答えず、事故リスク軽減のため集団通勤を米軍に働きかけていくとした。

 防衛省から基地周辺海域での水質検査結果の報告もあった。基地発足前に市が要望して実現した検査で、基地内の浄化槽が運用を開始してから4回目の調査となる。

 2024年3月7日に基地がある尾和地区と袖志地区の東、西側の計3カ所で実施。初めて3カ所から全窒素が環境基準の5・6倍~7・3倍となる高濃度の値を検出した。防衛省は「調査した日は高い波がある日でプランクトンや藻が海中から上がってきたためで、水質悪化の状況は見られないとコンサル会社から報告を受けている」と説明した。

 これに対し、中山泰市長は「この説明では環境基準の6倍、7倍となっていることの意味、影響がわからない。基地由来のものなのか。専門家の評価も得てほしい」と述べ、文書での回答を求めた。

 中山市長はさらに沖縄県で発生した米軍関係者の性犯罪が県に報告されなかった問題を取り上げ、「関係自治体に報告、情報提供が一切なかったことは極めて遺憾」と表明。「万が一にも沖縄県と同様の事例が発生した場合は無論、速やかに連絡会(安安連)に情報提供があり、必要な対応の確認、共有がなされることを確認したい」と表明した。

 これに対し、防衛省は「万一の事件事故が発生した場合、可能な限り速やかに情報提供に努める。情報提供については中央で議論されており、注視していきたい」と答えた。【塩田敏夫】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。