熱中症によって亡くなった人は、2018年~2022年の5年間で見ると年間で1500人前後で自然災害よりも多い数となっている。もはや身近な災害ともいえる熱中症について、東京大学大学院の客員教授で防災行動や危機管理の専門家・松尾一郎さんと考える。
<みんなの熱中症体験>
他人事ではない熱中症の危険。街なかで話を聞くと、その恐怖に直面した人もいた。80代女性は「頭がブワーとして、首からブワーとモヤっとしちゃって。ちょっと目まいがしてきて。お水飲んで、静かに横になって、死ぬんじゃないかと思った」と話す。
福島県では、まだ6月にも関わらず「暑さ」が原因と見られる犠牲者も。消防によると、6月12日の午後3時すぎ、会津坂下町の畑で80代の女性が倒れているのを通りかかった人が発見。救急隊が駆けつけた時にはすでに意識は無く、その後、死亡が確認された。この日、会津地方では33℃の暑さとなった場所もあり、女性は畑作業中に熱中症によって亡くなったと見られている。
<危険性は時間・場所問わず>
これからますます本格化する暑さ。熱中症はいつ、どこで発生してもおかしくない。郡山消防署・救急係の森田昌之主任は「屋外では、中学生・高校生のケースだと運動中に発生したり、高齢者の方だと農作業中に発生してるケースがある。屋内でも、熱が発生する作業場だと熱中症が発生するリスクが高くなる」と話す。
<建設現場の熱中症対策>
福島県西郷村で行われている、障がい者支援施設の建設工事現場。熱中症を防ぐために、作業員は小型のファンがついた作業服を着用し、ミストファンや氷を準備した場所でこまめな休憩を挟むことにしている。
現場管理者は「作業員の人手不足と高齢化が進んでいるので、暑い日が続くと熱中症のリスクも増し、集中力と作業効率が落ちてしまうことが懸念される」と話す。
厚生労働省によると、2023年1年間の、業務中の熱中症での死傷者数は1106人と前の年の1.3倍。亡くなった人は31人と、過去10年で最も多くなっている。
<作業員を支える自動販売機>
この現場ではさらなる対策も。スポーツドリンクは100円、水と麦茶は50円と、ワンコインで飲み物が買える「熱中症対策」の自動販売機が設置されている。
作業員は「汗をかくので一日何本も買うのですが、光建工業さんが負担してくれている部分もあるので、現場で働く我々にとっては、安く買えてありがたい」と話す。
この自動販売機は、この工事を請け負う福島県郡山市のゼネコン「光建工業」と、その協力会社などが協同で4年前から夏の期間限定で工事現場への設置を始めた。
飲み物は定価150円ほどだが、差額分は「光建工業」や協力会社が補うかたち。
光建工業の櫻井広太課長は「熱中症はやはり労災の中でも最も多い事故・リスクとなる。特に近年、暑さが増しているので、我々としても早めの対策を心がけている」と話す。
作業員の安全のために、これまで15カ所に設置していて、設置された現場で熱中症による重症の労働災害は発生していないという。
<みんなが活用できる涼み処>
屋外の現場では様々な対策が取られているが、街なかには誰でも利用できる避暑スポットが開放されている。福島県はホームページ上に、県内に1200か所以上ある「ふくしま涼み処」のマップを公開している。「涼み処」は暑さをしのぐために県が協力を依頼している施設だ。
<防災マイスターの提言>
防災マイスターの松尾一郎さんは、熱中症対策は「熱中症警戒アラート・特別警戒アラート」が出ている場合は、なるべく外には出ない。自宅に居たならクーラーを極力つけっぱなしにすることが、命を守るために重要と話す。
■「警戒アラート」は前日午後5時、または当日の午前5時に発表。日最高暑さ指数33以上が予測される場合に出される。
■「特別警戒アラート」は前日の午後2時に発表。日最高暑さ指数35以上が予測される場合に出される。
また、熱中症対策グッズの活用など個人での対策も大切だという。
「熱中症」は急に悪化するケースもあり、消防ではけいれんやめまいが出たら涼しい場所に移動し、塩分と水分を補給。意識がもうろうとしたら、速やかに救急車を呼ぶよう呼びかけている。
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