「富士山を壊すのは誰?」を出版した渡辺豊博・元都留文科大教授=静岡県三島市芝本町のグラウンドワーク三島で、2024年7月16日午後2時3分、石川宏撮影

 山梨県が提唱する富士山登山鉄道構想に反対する立場から、静岡県三島市の市民団体、グラウンドワーク三島(GW三島)の渡辺豊博・専務理事(74)=元都留文科大教授=が「富士山を壊すのは誰?」(泉町書房)を出版した。渡辺専務理事は「静岡側は登山鉄道の情報が提供されておらず蚊帳の外。静岡の人も登山鉄道についての認識を深め、構想を中止に追い込みたい」と話している。また、GW三島は登山鉄道中止を求める署名活動を始めた。山梨側では既に署名活動は始まっている。【石川宏】

 「富士山登山鉄道に反対する会」相談役の村串仁三郎・法政大名誉教授と共同で編集、執筆した。

 渡辺専務理事は、登山鉄道に反対する理由として(1)鉄道敷設による環境破壊が懸念される(2)(山梨県が理由に挙げる)排ガス対策はEV(電気自動車)バスで解決する(3)スラッシュ雪崩(雪泥流)の被害に遭う危険性が高い(4)1400億円とする事業費は増大する可能性が高い――などを挙げる。

 また、渡辺専務理事は「山梨県は富士吉田口5合目に通年利用可能なリゾートの整備案を示したが、『信仰の山』という富士山の本質を基礎に考えれば、冬の入山は許されない」と主張。「登山鉄道を建設すれば、オーバーツーリズムを助長する」と述べた。

 本は四六判、238ページ。税別1800円。署名活動は静岡側だけで3万7760筆を目標に掲げており、静岡・山梨両県知事などに提出する予定。

富士山登山鉄道構想

 山梨県の有料道路、富士スバルライン上に吉田口5合目(標高2305メートル)までLRT(次世代型路面電車)を敷設する構想。山梨県の検討会が2021年2月に構想をまとめた。構想によると、延長約28キロの複線で概算整備費約1400億円。年間利用者数約300万人。往復運賃1万円。事業主体は民間事業者を前提にしており、検討会の理事や委員にJR東日本、JR東海、京王電鉄、小田急電鉄の社長や役員が名を連ねる。年間を通じた運行を前提としており、EVバスは「冬季運行に課題がある」として検討対象から除外された。

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