福島県唯一の震災遺構「浪江町立請戸小学校」について、町は今秋にも指定管理者制度を導入する。公募の結果、宮城県多賀城市のNPO法人「海族(かいぞく)DMC」を予定者に選定した。町議会9月定例会に関連議案を提出し、可決されれば町の直営から切り替える。赤字が続いており、民間のノウハウを生かして収支の改善や集客を図る。
請戸小は2011年の東日本大震災で15メートル超の津波に襲われ、校舎2階の床付近まで浸水。在校中の教職員や児童93人(うち1年生11人は帰宅)は高台の大平山に避難して無事だった。東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が17年春に解除されたが、学校は再開せず21年春に閉校。同年10月に震災遺構としてオープンした。
現在は会計年度任用職員5人がスタッフとして働き、人手の足りない時は町生涯学習課の2人も業務に当たるという。22年度は5万4513人が訪れ、歳入は入館料など1341万円。歳出は会計年度任用職員の給与、電気水道代、清掃費、パンフレット印刷費など1853万円で、約490万円の赤字だった。23年度は1・2倍の6万4548人が訪れた。歳出入の詳細は集計中だが、赤字額は22年度と大幅な違いはないという。
東日本大震災で被災した建物を保存・公開する震災遺構を巡っては、1市町村1カ所まで国の復興交付金が使え、請戸小も約3億5000万円で整備した。一方、維持管理費に財政支援はなく、赤字分は自治体負担となっている。
海族DMCは宮城県などで津波に流された行方不明者の捜索活動に取り組み、19年に法人化。近年は同県内外の沿岸の街づくりや、同県名取市閖上(ゆりあげ)のヨットハーバーの管理運営に当たる。太見洋介理事長(47)=福島市出身=は「浪江の歴史を尊重し、震災を後世に伝えながら、交流人口拡大や外国人旅行者への情報発信などに力を入れたい」と話している。【尾崎修二】
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