点検結果について説明する弁護士ら=横浜市役所で2024年7月25日、横見知佳撮影

 横浜市教育委員会から委託を受けた弁護士チームは25日、過去10年間に発生した市立学校の児童生徒の自殺事案の点検結果を発表した。学校主体の調査にとどめた対象36件のうち3件は「いじめによる自殺の疑いがある」と判断。さらに3件を含む13件は、国の指針などを踏まえ第三者を交えた調査をするべきだったと結論付けた。【岡正勝】

 2020年に横浜市立中2年の女子生徒がいじめを苦に自殺したことが今年3月に発覚。直後から遺族がいじめを訴えながら、市教委が速やかにいじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」として第三者調査に移行していなかったことも明るみになり、弁護士チームが過去10年間の36件を再点検した。

 弁護士チームによると、36件のうち3件は遺書やノートの記述、遺族の申し立てから「いじめによる自殺の疑いがある」と判断したという。

 弁護士チームは、調査の多くで児童生徒への聞き取りが実施されていなかったことも問題視。これらの記録を検証した結果、第三者を交えた調査をするべきだったとしたのは13件とした。だが、時間経過や遺族の意向を踏まえ、現時点で調査が必要としたのは3件にとどめた。

 市役所で記者会見したまとめ役の栗山博史弁護士は、いじめによる自殺の疑いがある場合は「早い段階から弁護士ら専門家を調査に入れるなど、第三者の視点が必要だ」と指摘。市教育委員会に対し、指摘した3件の「早急な対応」を求めた。

 児童生徒が自殺を図った場合、文部科学省の指針で学校主体の調査を実施し、必要に応じて外部専門家を加えた調査も定めている。遺族から求められた場合は「重大事態」として第三者が調査をする。

「公表、遺族の了解得られず」

 弁護士チームの点検結果を受け、横浜市教育委員会も記者会見を開いた。自殺した児童生徒が遺書にいじめ被害を記載したり、保護者から申し立てがあったりした3件について「いじめによる自殺の疑いがある」と指摘されたが、「不適切な対応ではなかった」と弁明した。

 文部科学省の基本方針では、児童生徒や保護者からいじめにより生命や財産に重大な被害に遭った申し立てがあった時は、いじめ防止対策推進法に基づき「重大事態」として第三者による調査を求めている。

 今回の調査結果で「いじめによる自殺の疑いがある」とされた3件を学校主体の調査にとどめた理由について、市教委は「重大事態になると調査結果が公表されることになるため遺族から了解を得られなかった」と弁明。市教委の住田剛一人権健康教育部長は「当時の判断としてはそれしかなかった。今は足りないところがあったと受け止めている」と話した。【横見知佳】

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