政府は25日、トラック運転手の残業規制強化で物流が滞る「2024年問題」への対応を議論する関係閣僚会議を首相官邸で開いた。輸送力確保に向け、無人化・自動化した物流専用の「自動物流道路」の先行ルートを10年後をめどに整備する。その前段として、27年度までに建設中の新東名高速道路の新秦野(神奈川県)-新御殿場(静岡県)間の路上で自動輸送カートを走らせる社会実験をする。
自動物流道路は、人口減少や脱炭素化などへの対応のため、道路空間とデジタル技術を活用した新たな輸送手法として導入が検討されている。自動化により小口の荷物を多頻度で輸送できるほか、道路空間上に荷物の保管機能を持たせることで、オフピークも活用して荷物を運んで需要を平準化させるなど、物流全体の効率化につながるとの期待がある。
利用する道路空間は、高速道路などの中央分離帯や路肩・のり面、地下などを想定。標準仕様のパレット(荷役台)などを使った荷物を、自動輸送カートに載せて運ぶ。政府は物流量が大きい東京-大阪間のうち、小規模な改良で実現できる区間を選定して30年代半ばにも先行ルートの運用を始める考えだ。新東名の社会実験では、新区間の供用開始前に自動輸送カートを走行させ、路面への影響や適正な速度などを検証する。
また鉄道の貨物駅や空港、港湾などの物流拠点との連携も視野に入れ、切れ目のない積み替えなどにも取り組む。整備に必要な多額の資金について国土交通省は「民間の活力を最大限活用する」としており、ビジネスモデル構築も課題だ。
25日の会議で岸田文雄首相は「今後の人口減少社会を見据えると、物流機能維持には既存の物流インフラを活用しつつ、物流の常識を根本から革新していく取り組みが不可欠だ」と述べ、迅速な対応を関係閣僚に指示した。
また、宅配便の再配達を半減させるため、玄関前に荷物を置く「置き配」を選んだ人などにポイントを還元する実証事業を10月から始めることも決めた。アマゾンや楽天、ヤマト運輸、日本郵便などが参加。国は置き配1配送当たり最大5円を支援する。【佐久間一輝】
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