家に不在のときでも、玄関前に荷物を届けてもらえる「置き配」。

国が25日、支援強化策を発表するなど、サービスが広がりを見せる中で今、「置き配」の盗難被害が相次いでいるというのです。被害の実態を取材しました。


■佐川急便が「置き配」本格始動 国はポイント還元で利用をさらに後押し

物流大手の佐川急便は7月、9月2日から「置き配」を本格的に導入すると発表しました。

これで、日本郵便、ヤマト運輸とあわせて、物流大手3社が、すべて「置き配」サービスを本格展開することになります。

さらに国は25日、「置き配」などを選んだ利用者に、1配送あたり最大5円を補助するポイント還元事業を10月から実施すると発表しました。

「newsランナー」がLINEアンケートを行った結果、「Q.あなたは置き配を利用しますか?」という質問に対して、回答者のおよそ半分が「利用する」と回答しました。

その理由は「仕事で受け取れない事が多いから」、「部屋着で会いたくないから」などと、置き配を便利に感じている人が多いようです。


■拡大の背景に「2024年問題」 年間5億個の再配達が配送業界を悩ませる

「置き配」が拡大していく背景には、配送業界を悩ませる大きな問題があります。

【配送ドライバー 四方冬千さん】「いなかったですね。このお客さんは午前指定かけている、でもいなかった。寝ているということもあるかもしれません」

厚生労働省によると、1年間で再配達される宅配便の数は、実におよそ5億個。

【配送ドライバー 四方冬千さん】「この方だと、おとといからずっと不在。(Q.何回か来ている?)おととい、きのう、きょうで、3日連続で不在になりますね」

ドライバーの時間外労働が制限される、いわゆる「2024年問題」の中で、この5億個の荷物が大きな障壁となっていて、再配達の必要がなくなる「置き配」に期待が集まっているのです。


■「置き配」の浸透で相次ぐ盗難 犯人はまさかの「同じマンションの住民」

その一方で、いま相次いでいるのが、「置き配」の盗難です。

【被害に遭った人】「『あれ?』って感じですね。取られたなこれはと」

こう話すのは、ことし4月に置き配の盗難被害にあった男性です。

イヤホンなどをECサイトで注文したという男性。日中は仕事で家にいないため、「置き配」を選択しました。

【被害に遭った人】「(仕事中に)メールが来て『配達完了しました』と。写真も一緒に出るんですよ。置かれている写真が。家の前にあるんですけど、明らかに3個ぐらいあるはずの袋が、(帰宅すると)1つしかない。さすがに怒りが湧きました」


実は前にも、「置き配」にした商品を盗まれたことがあり、腹に据えかねた男性は、犯人を捕まえようと、あえて荷物を家の前に置き、そこに、位置情報を検索できる器具をこっそり貼り付けたといいます。

すると…。
【被害にあった人】「(位置情報が)同じマンションなんです。その時、恐怖に近いというか。もしかしたら同じマンションの人が盗んでいるかもしれないと」

なんと「犯人」は同じマンションの住人。

その後男性は警察に相談し、商品は手元に戻ってきたということです。


■防犯の専門家は「商品だけでなく、個人情報が出てしまう」と指摘

「置き配」の荷物を盗まれることによる被害は、「ただ商品を失うことだけにとどまらない」と防犯の専門家は指摘します。

【日本防犯学校 梅本正行学長】「置いてある物を盗んでいくだけですから、人に傷つけたり脅したりする必要がないので、犯罪者からしたら手軽な犯罪。一番怖いのは、置き配をしている人の情報を取られるツールだということ。個人情報が出てしまう。フルネーム、電話番号も分かってしまう。ストーカーまでいったら場合によっては、凶悪犯罪に発展する可能性もあります」

便利なサービスとして広がりを見せる「置き配」。
一方で、トラブルには、注意が必要です。


■各宅配業者の対応は...

頼んだ荷物だけではなく、個人情報も盗まれる危険性があるということですが、盗難などの被害に対する、各宅配業者の対応はこちらです。

日本郵便は特定のインターネット事業者が発送した荷物に限り、盗難については上限1万円で保険が適用されます。

ヤマト運輸は個別の状況を確認の上、対応しているということです。

佐川急便は基本、引き渡し後の盗難・紛失・き損は補償の対象外だということですが、状況によって対応してくれる場合もあるということです。

アマゾンなどのインターネットショッピングサイトでも、補償に応じてくれるところがあります。

さらに、損保ジャパンなどでは個人用火災保険で置き配の盗難などを補償してくれるということです。

宅配業者も置き配保険などを用意しているということですが、置き配で盗難に遭った場合は、やはり自己責任になります。

【菊地幸夫弁護士】「送り主と受け取り側のそれぞれが置き配オッケーですよということであれば、運送業者としては置き配すれば責任は全部免れますから。あと盗まれたかどうかは、荷物を送った側と受け取った側の自己責任になってしまいます」


■置き配を安心して使うためのサービスも誕生

荷物を盗まれずに、置き配を便利に使うために、こんなサービスも登場しています。

・「OKIPPA」
置き配用のバッグです。
バッグに鍵をかけられるだけではなく、ドアとワイヤーで固定することも可能で、置き配を広めるために住民に無料で配布している自治体もあるということです。

・「スマート置き配」
オートロックのマンションに住人がカギなしで入れるシステムを応用してつくられたということで、配達員の方がデジタルキーでロックを解除して、荷物を部屋の前まで運べる仕組みになっているということです。
部屋の前まで運べば、盗難リスクも減るだろう、ということです。

このほかにも盗難被害への対策として最近では荷物を置く場所や時間を細かく指定できるサービスも増えています。

例えば、周囲から少しでも見えづらくするため、置き配の指定先としてガスメーターボックスや物置の中なども活用することができるよということです。

自己責任になってしまう恐れもあるからこそ、対策が求められます。

【菊地幸夫弁護士】「根本的には宅配ボックスなど盗難しにくい設備を設けるのが、一番いいでしょう」

置き配への不安もある中、25日、国が置き配利用者へのポイント還元事業を実施すると発表しました。
2024年問題への対策の一環となりますが、こうした国の動きをどう見ますか?

【関西テレビ 神崎博報道デスク】「ドライバーの2024年問題ドライバー不足があって、宅配業界においては、再配達が一番の問題になっていますが、置き配や宅配ボックスなどが普及していることによって、実は1年間で再配達率がこれまで11%台だったのが、10%台まで回復しているそうです。そのため置き配をどんどん進めていきたいという、政府の狙いがあります。ポイントを付けることで、今だいぶ置き配は進んでいますが、さらに前に進めることで、この2024年問題を何とか解決に導きたいというところです」

大変便利な一方で、置き配ならではのリスクもあるということをしっかり認識していただいて、対策などそれぞれ講じていただけたらと思います。

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月25日放送)

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