ALSの患者の依頼で殺害した罪などに問われ、一審で有罪判決を受けた医師の男が、健康診断をしていないのに診断書を作成した罪にも問われた裁判で京都地方裁判所は有罪判決を言い渡しました。

■ウソの診断書を作り 交付した罪

医師の大久保愉一被告(46)は2018年、元医師の山本直樹被告(47)と共謀し、当時勤めていた宮城県内の病院で、山本被告の健康診断を実施していないのに診断書を作り、交付した罪に問われています。

■「私だけが起訴されているのは理解できない」

先月の初公判で大久保被告は起訴内容を認めましたが、「山本に頼まれて山本のためにやったのに、私だけが起訴されているのは理解ができないし、納得いかない」と話し、弁護側は「検察官の公訴権の濫用だ」などと公訴棄却を求めていました。

■「医師としての規範意識 欠如しているのは明らか」と検察側

一方、検察側は「必要的共犯の不処罰の過去の判例を鑑みて山本直樹を起訴しなかったにすぎない」と公訴の正当性を主張。

その上で「少なくとも数年にわたり山本との間で同様の行為を繰り返し、非常に軽い感覚で依頼に応じていることから医師としての規範意識が欠如しているのは明らか」として罰金50万円を求めました。

■「診断書の社会的信用性を無くす悪質な犯行」罰金30万円の判決

25日の判決で京都地裁(川上宏裁判長)は、「公訴権濫用には当らない」などとして弁護側の主張を退け、公訴事実を認定。

そのうえで、「診断書の社会的信用性を失くす悪質な犯行。共犯者の依頼を軽々しく引き受け、数年にわたって同様の犯行を繰り返す中で、本件犯行に及んだ被告人の意思決定は強い非難に値する」と指摘しました。

一方で、「反省の弁を述べている」などとして罰金30万円を言い渡しました。

■ALS嘱託殺人などの控訴審は10月初旬から始まる予定

大久保被告は他にも、山本被告と共謀し難病・ALS患者の女性の依頼を受け、薬物を投与して殺害した「嘱託殺人」や、山本被告の父親を殺害した罪などにも問われ、ことし3月に一審で懲役18年を言い渡されましたが、判決を不服として控訴していました。

大久保被告の弁護人によると、控訴審は10月初旬に始まる予定だということです。

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