岐阜市の陸上自衛隊射撃場で昨年6月、訓練中の自衛官候補生の男が自動小銃で隊員3人を撃ち死傷させた事件で、陸自は18日、弾薬と物理的な隔離がされず、男に発砲する猶予を与えたことなどが原因だったとする調査報告書を公表した。再発防止策として全隊員への教育の徹底などを挙げ、陸自は17日付で全部隊に通達を出した。
男は当時18歳だった渡辺直杜被告(19)=強盗殺人罪などで起訴。起訴状などによると、昨年6月14日、射撃訓練中、人を銃撃するため弾薬を奪おうと隊員3人に小銃を計4発発射して2人を殺害し、1人に重傷を負わせたとしている。
調査報告書ではまず、当時の教育指導は規定通りに適切に実施されたと主張。その上で原因について、「命令への絶対的な服従心、武器を持つことの重要性への自覚と心構え」が渡辺被告に対して十分に養成できなかったことや、「仲間に発砲する自衛官候補生がいるとは想定せず、特異な行動を止められなかった」とした。安全管理面で、新入隊員の訓練では弾薬を渡す手順の見直しが必要とも指摘した。
再発防止策として、心構えなどの教育の徹底▽訓練生の様子を客観的に把握するため「服務指導補助者」の複数配置▽新入隊員の訓練では弾薬は射撃直前に受け取る▽射場勤務員が不測の事態を直接制止できるよう教育する-の4点を挙げた。
陸自はこれらを昨年8月10日から新入隊員に行っていたが、今回改めて全部隊に通達を出した。
一方、事件の動機など人的要因については刑事裁判へ影響を及ぼすことから公表しなかった。(市岡豊大)
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