スーパーの棚に並ぶオリーブオイル。相次ぐ値上げでエキストラバージンオリーブオイルは1500円前後の商品が主流となっている=東京都内で2024年7月、稲垣衆史撮影

 健康志向の高まりから日本の食卓でも広く親しまれているオリーブオイルの値上げが続いている。不作の影響で品薄になっているためだが、スーパーの棚には安価な商品も並ぶ。どういうことなのか。

23~80%の値上げ

 値上げは、主要生産地のスペインで2年続けて干ばつが起き、記録的減産となったことが主な原因だ。運輸コストの高騰や円安も重なった。

 大手製油会社の日清オイリオグループは5月納入分から2022年以来4度目の値上げを行い、家庭用と業務用の商品を23~80%引き上げた。

 国際オリーブ理事会(IOC、本部・スペイン)の分類によると、オリーブオイルにはまず、遠心分離機などで物理的に油分を搾った「バージンオリーブオイル」がある。そのうち、酸度が低く最も上質なものを「エキストラバージンオリーブオイル」と呼ぶ。

 また、バージンオリーブオイルのうち酸度が高いものを化学的に精製し、風味付けのためにエキストラバージンオリーブオイルなどをブレンドしたものを「オリーブオイル(ピュアオリーブオイル)」としている。

 従来、日本で広く流通しているのはこの2種類だ。エキストラバージンオリーブオイルはサラダのドレッシングなどに使われ、ピュアオリーブオイルは炒め物などに用いられることが多い。

「オリーブポマスオイル」とは

 7月中旬に記者が訪れた東京都心のスーパーでは、230グラム前後のエキストラバージンオリーブオイルが1500円前後で並んでおり、手が出しづらくなっている。そんな中で目にする機会が増えたのが、「オリーブポマスオイル」と記された油だ。1リットル弱で900円台と、手ごろな価格帯となっている。

 しかし、ネット交流サービス(SNS)上には戸惑いの声も散見される。

 「スーパーに行ったら安いのが売られてて即購入。ところが! 『オリーブポマスオイル』と書いてあった」

 「何だか分かんないけど、買った」

 なぜ安いのか。一般社団法人「日本オリーブオイルソムリエ協会」(東京)の多田俊哉代表理事は「バージンオリーブオイルなどとは別物だからです」と語る。

 原料はオリーブの「搾りかす」(ポマス)で、溶剤を使って油を抽出する。IOCの分類ではこれを「精製オリーブポマスオイル」と呼び、エキストラバージンオリーブオイルなどをブレンドしたものがオリーブポマスオイルとなる。

 多田さんによると、バージンオリーブオイルとの成分上の共通点は悪玉コレステロールを抑えるオレイン酸が含まれる程度。製造過程で酸度を中和するなどするため、本来の風味や色はなく、抗酸化作用があるポリフェノールも含まれていないという。

 「他の食用油と比べると割高でもあり、オリーブオイルを使っていることを打ち出したい飲食店は別として、健康志向の一般消費者が利用するメリットはあまり見当たりません」

今年は豊作の予想

 スーパーの棚には、オリーブポマスオイルのほかに、菜種油などとエキストラバージンオリーブオイルを混ぜた油も陳列されている。相次ぐ値上げによる消費者離れを防ぐため、最近投入された商品だ。

 価格はエキストラバージンオリーブオイルの3分の2から半分程度に抑えられている。オリーブの風味を手軽に楽しめ、料理にそのままかけることもできるという。

 しかし、多田さんは「化学的に抽出した植物油と混ぜることで、オリーブオイル本来の豊富な栄養素を摂取することは期待しにくい」と指摘する。その上でこう提案する。

 「高くてもエキストラバージンオリーブオイルを選ぶことは健康面だけでなく、経済的にもメリットがあります。例えば揚げ物をする場合、酸化しにくいオリーブオイルを使えば長く再利用ができ、結果的に天ぷら油などを使うよりお得になります」

 一方で、品薄は近いうちに解消される可能性がある。スペインでは今年、冬から春にかけて適度な降雨があり、干ばつを免れて豊作も予想されているという。

 秋には産地価格が下がり始めるとみられ、多田さんは「日本でももう少し手ごろな価格で商品が買えるようになるのでは」と話している。【稲垣衆史】

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