夏山が多くの登山客でにぎわう季節がやって来た。そのめざす頂が、活火山である場合もあるだろう。何しろ日本は世界有数の火山国。111もの活火山があり、登山客に人気の名峰も少なくない。近年の火山災害を振り返ると、必ずしも警戒レベルが高まった時にばかり噴火が起きるとは限らない。万が一、登山中に噴火に遭遇したらどうしたらいいのだろうか。
58人が死亡、5人が行方不明となる戦後最悪の火山災害となった2014年9月の御嶽山噴火(長野、岐阜県境)と、12人が死傷した18年1月の草津白根山噴火(群馬県)には、ある共通点がある。どちらも「静穏」とされる噴火警戒レベル1で起きたという点だ。
御嶽山噴火は紅葉シーズンの天気の良い週末に起きた。火口周辺には多くの登山客がいた。3週間前から火山性地震が活発化していたものの、地震の回数は減る中での噴火だった。草津白根山の噴火は火山活動の高まりを示す現象が事前に観測されず、気象庁が従来マークしていた火口とは別の場所で発生した。
人気の登山地の一つ、北アルプスの焼岳(長野、岐阜県境)では3月以降、火山性地震が増え、山頂付近で緩やかな膨張も確認された。7月に入って地震は減っており、気象庁は17日、「噴火警戒レベルを2に上げる可能性は低くなっている」との解説情報を出した。だが依然として中長期的に火山活動が高まっている可能性はあり、異変に注意が必要だ。
「火山を登る」意識して
御嶽山噴火を受け、名古屋大が地元に設置した火山研究施設で研究を続ける金幸隆・同大特任准教授(変動地形学)は「御嶽山で起きたような水蒸気噴火は、大規模なマグマ噴火と異なり、前兆を捉えることが非常に難しい。火山活動の高まりは分かっても、いつ噴火するかは分からない」と予測の難しさを口にする。
だからこそ、登山者には「『火山を登っている』という意識をしっかり持つことと、そのための備えが重要だ」と話す。
もし噴火に遭遇した時、具体的に何をすればいいのか。金さんは「最初の2分が勝負。写真を撮っている暇はない。すぐシェルターや岩陰をめざしてほしい」と強調する。
御嶽山では噴火と同時に噴煙が上昇した後、大小の噴石が時速300キロもの猛烈な勢いで地面をたたきつけた。犠牲者の死因のほとんどは噴石による外傷だった。そのため、ヘルメットをかぶったり、リュックサックで背中を守ったりすることが必要だという。
運良くシェルターや山小屋に避難できても、いつまでその場所にとどまり、いつ下山を始めればいいかの判断も難しい。噴火が続けざまに起こったり、硫化水素や二酸化炭素などの火山ガスが高濃度で充満したりしている危険性があるからだ。マスクを持ち歩くか、タオルで口を覆うことが重要という。特に硫化水素は水に溶けるため、タオルを湿らせると効果的という。
その他に、情報入手に役立つスマートフォンと予備のバッテリー▽携行食▽夏でも防寒具――などが必需品となる。入山に際し、気象庁や火山防災協議会のホームページで火山活動の状況や噴火警戒レベルなども確認しておきたい。
金さんは「あらかじめ登山ルートや避難施設の位置を確かめ、噴火を想定して避難シミュレーションをしておくことが重要」と助言する。【垂水友里香】
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