インターネットの地図サービス「グーグルマップ」の口コミを巡って18日、医師らがグーグルに損害賠償を求める集団訴訟を起こした。人気サービスだけに批判的な投稿の影響は大きく、原告側は「権利侵害の大きさは個人サイトと比較にならない」と訴える。口コミの削除を求めても応じてもらえるのは一部といい、サービスを運営するプラットフォーマーである巨大IT企業の責任を問う動きが強まっている。

「受診歴のない人物から中傷口コミを書かれた」「無断で待合室を撮影され、アップされた」

集団訴訟の原告団を対象に実施したアンケートには、グーグルマップの口コミを巡るトラブルが複数寄せられた。

口コミなどに関連した相談は増加傾向にある。総務省の「違法・有害情報相談センター」に令和4年度に寄せられた「口コミ・ランキングサイト」への書き込みに関する相談は249件。平成30年度の2倍近くとなった。

こうしたなかで原告側が注目するのが、グーグルの影響力だ。

ある調査によれば、地図アプリの利用率1位はグーグルマップで、99・4%が「使ったことがある」と回答したという。

原告団のアンケートでも「噓の口コミで新患数が激減した」といった影響を訴える声があった。

不正確な投稿などがあれば、店舗・施設側がグーグル側に削除を求めることになる。グーグル広報部は「24時間体制で企業プロフィルを保護し、不正なレビューを削除している」とするが、原告側は「グーグルの削除基準は必ずしも明確ではなく、対応してもらえるのはごくわずか」と指摘。司法手続きで削除を求めるにしても労力や費用がかかるとしている。

責任を問う声はグーグル以外にも向かい始めている。

今月10日には衣料品通販大手ZOZO(ゾゾ)創業者の前沢友作氏がフェイスブックなどで自身になりすました詐欺広告が放置されているとして、運営するメタ社を提訴する考えを表明。政府はスマートフォン向けアプリ市場を支配するプラットフォーマーを規制する法案を今国会に提出する見込みだ。(滝口亜希)

【論点】削除線引き、見直し迫る

曽我部真裕氏=本人提供

曽我部真裕・京都大大学院教授(憲法・情報法)

「医療機関は差別化が難しく、広告も制限されているため、受診する医療機関を選ぶ上で口コミの影響は大きい。グーグルマップは地図サービスの中でもシェアが高く、なおさら影響力は大きい。

医師は公共性の高い職業で、一定の社会的評価を受けるのは仕方がない。他方で、事実無根の誹謗(ひぼう)中傷を受けるいわれはない。噓だと知りながら書き込んだ口コミまで、表現の自由で守られるということではない。

ひどい口コミは削除することが求められるが、グーグル側が悪評の真偽を見分けるのは困難だ。診療内容について医師と患者で見解が異なる場合などは判断が難しい。

今月に入り、フェイスブックなどのSNS上で著名人になりすました投資詐欺広告が拡大しているとして、運営するメタ社を提訴する動きが表面化するなど、サービスを運営するプラットフォーマーの責任を問う声は大きくなっている。今回の訴訟もその流れの一環とみることができる。

グーグル側も口コミを削除するかどうかの線引きを見直すことが求められるようになるだろう」(聞き手 橘川玲奈)

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