北日本近海の海洋熱波が陸地の高温に影響を与えたことを説明する東京大の中村尚教授=東京都港区の気象庁で2024年7月19日、大野友嘉子撮影

 気象庁と東京大などは19日、2023年に北日本で過去最も暑い夏となったのは、海面水温が異常に高くなる「海洋熱波」が三陸沖など北日本近海で発生したことが大きく影響したとみられると発表した。海面水温が高い状態は今も続いており、酷暑が予想される今夏の気候に影響する可能性があるという。

 三陸沖などでは通常、水温の低い海水と暖かく湿った空気によって、夏には上空2キロ以下で「下層雲」ができやすい。しかし、昨夏は暖流の黒潮が平年よりも大きく北に流れ込んだ。その結果、下層雲が作られにくくなり、北日本の日射量が増えた。

昨夏の猛暑のメカニズム=気象庁、東京大、北海道大、海洋研究開発機構提供

 10年に1度レベルの高い海面水温が5日以上連続した場合、一般的に海洋熱波と呼ばれる。北海道太平洋沖や三陸沖などでは昨年2月から8月ごろまで、海洋熱波の状態が続いていたという。

 海洋熱波で大気が加熱されたことや、大気中の水蒸気が増えて温室効果が強まったことも、昨夏に北日本の陸地が高温になった一因としている。

 分析に当たった東京大の中村尚教授は「23年の猛暑は海洋熱波が猛暑を助長した明確な事例。黒潮が極端に北上した原因はこれから解明したい」と話した。気象庁大気海洋部の佐藤大卓予報官は「温暖化が進む中で、異常高温のリスクが高まっている。海洋熱波が地上に与える影響について理解を深め、季節予報などに役立てたい」と述べた。【大野友嘉子】

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