百条委員会の冒頭、亡くなった元県西播磨県民局長の男性に黙とうする委員ら=神戸市中央区で2024年7月19日午後1時36分、北村隆夫撮影

 斎藤元彦・兵庫県知事によるパワーハラスメント疑惑などを内部告発した元県西播磨県民局長の男性(60)が死亡した問題を巡り、疑惑の真相解明を進めている県議会(定数86)の百条委員会。刑事罰も可能なその強力な調査権限から、地方自治をチェックする「伝家の宝刀」とも呼ばれる仕組みを解説する。

 県議会が、元局長の告発文を検証する調査特別委員会の設置を賛成多数で可決したのは6月の定例議会だ。設置は51年ぶりで、議案を他会派とともに提出した最大会派の自民党県議団は「調査は県民の代表である県議会が積極的に関わる必要がある」と必要性を強調した。

 調査特別委員会は、地方議会が地方自治法100条に基づいて設置することから百条委と呼ばれる。地方事務に関わる疑惑や不祥事について事実関係の解明を目指し、あらゆる関係者の証人出頭や証拠記録の提出を求めることができる。

 出頭した証人が虚偽の陳述をした場合は5年以下の禁錮刑、正当な理由がない出頭拒否には6月以下の禁錮刑や10万円以下の罰金を科す罰則規定がある。

 最近では東京都議会で2017年、豊洲市場(江東区)への移転問題を検証する百条委が設置され、移転を決めた石原慎太郎元知事を証人喚問した。

 総務省によると、21~23年度でも千葉県や32市町村で計36件の百条委が設置され、うち8自治体で関係者が偽証容疑などで刑事告発された。

 百条委は国会の国政調査権に匹敵する強い権限を持つことから、ある地方議員は「地方議会の伝家の宝刀。調査結果によっては関係者の進退に直結する」と話す。

 「突然ですが、辞職しようと思います。だから、百条委だけは」。兵庫県議会が百条委設置を可決する直前の6月上旬、斎藤知事の右腕として議会との調整役を担った片山安孝副知事が、自民の藤本百男・議会運営委員長に懇願したことが明らかになっている。片山副知事は7月12日、県政が混乱する責任を取るとして、辞職することを表明した。

 一連の問題を巡っては、元局長が3月、パワハラをはじめとする斎藤知事が絡んだ七つの疑惑をまとめた告発文を一部の県議会議員や報道機関に配った。知事は全ての疑惑を巡る事実関係を否定している。

 元局長は19日の百条委に証人として出頭する予定だったが、7日に県内の親族宅で亡くなっているのが見つかった。自殺とみられる。

 斎藤知事の辞職を求める声が相次ぐ中、知事は16日の定例記者会見で「より良い県政を目指すのが私の責任だ」と述べ、改めて辞職を否定した。【砂押健太、高木香奈、山田麻未】

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