2018年、大阪府羽曳野市で男性が刺殺された事件の裁判員裁判。

直接証拠がない中、検察が17日の裁判で指摘したのは、“隣人トラブル”を背景とする殺害動機でした。

一方、被告は被害者こそが、このトラブルを「収めてくれた」人物であると話し、殺意を抱いたことはなかったと明言。

無罪を主張しました。

法廷で明かされた、トラブルの全容とは…

■「直接証拠なき殺人」 目撃者や凶器が発見されず「密室的住宅街」に警察は着目

2018年、羽曳野市の閑静な住宅街の路上で、会社員の平山喬司さん(当時64歳)が、背中から刃物で一突きされて殺害されました。

司法解剖の結果、傷は一カ所、横向きにした刃物が肋骨と肋骨の間をすり抜けて心臓に命中していたことが分かりました。

目撃者や凶器は見つからず、捜査は難航。

警察は現場となった住宅街の一角が外部からの侵入経路が限られる「密室的」な区画であったことに着目しました。

侵入者がいれば現場周辺の車のドライブレコーダーや防犯カメラに映るものの、そうした映像はないとして、犯人をこの区画内の住人に絞り込んで捜査。※

浮上したのが山本孝被告(48)でした。

※裁判ではカメラに映らない、狭いあぜ道などの通り道があると弁護側が指摘し、検察側も認めています。

■状況証拠の積み重ねで逮捕・起訴 被告は一貫して無罪主張

事件から4年後、状況証拠を積み重ねる捜査を経て山本被告は逮捕、起訴されましたが、一貫して無罪を主張しています。

こうした状況証拠の数々を審理する裁判は3カ月にわたり、16人に対する証人尋問と、検察・弁護側双方が証拠について意見を述べる論告・弁論が最終(求刑)を含めて4回設定されています。


■植木鉢の置き方をめぐる“隣人トラブル”が殺人事件へと発展? 当事者が語った全容

17日に行われた3回目の論告・弁論は「犯行動機」について。

まず前提として次のような状況がありました。

・2009年、山本被告が現場となった羽曳野市の住宅街に注文住宅を購入。
・その約1年後、隣の住宅に女性が引っ越してくる。
・殺害された平山さんは、その女性宅を週に1度ぐらいの頻度で訪れていたという。

そして法廷で当事者たちが証言したのが、事件の動機になったという、事件の約1年前から始まった“植木鉢をめぐる隣人トラブル”でした。

【山本被告の元妻】「植木鉢は(隣人女性宅の)敷地内にあるんですが、私たちの車の出入りするところに葉がすごくはみ出ていました」

(Q.駐車の邪魔になっていた?)

【山本被告の元妻】「そうですね」

【隣人の女性】「事件の1年前、帰宅したら敷地内のソテツ(観葉植物)の葉っぱが切り刻まれて、ばらまかれていました。植木鉢を奥に押し込まれたり、戻したりするのを繰り返していました。日の当たる場所に(植木鉢を)動かしていただけで、(駐車の)邪魔になるようにしていたわけではありません」

【山本被告】「植木鉢を倒さないように(自宅前のガレージに)侵入しないといけませんでした。一度、車がこすれて葉が2、3枚折れて垂れ下がったので、折ったことはあります」

(Q.隣人の家の窓に唾を吐いたことはありますか)

【山本被告】「あります。植木鉢の件で腹立たしくて5、6回しました。こっちが嫌がらせを受けていたと思っていましたが、(法廷で)隣人の女性の証言を聞いて、向こうは向こうで嫌がらせを受けていたと思っていて、認識の違いがあったのだと思いました」

■検察側「車の汚れ隣人・被害者による嫌がらせと思うなど『疑心暗鬼の末期症状』」

17日の論告で、検察は「山本被告は植木鉢をめぐり隣人とトラブルになり、事件当日も車の汚れが隣人の女性や平山さんによる嫌がらせだと思って洗うなど『疑心暗鬼の末期症状』で、恨みの感情を抱いていたことは明らか」と指摘。

そのうえで、「この事実だけで山本被告が犯人であると立証できるわけではないが、こうした動機も、被告人の犯人性に関する検討を検算的に確かなものにできる」と述べました。


■弁護側 被害者は他にもトラブル「検察は無理やり動機としてこじつけ」

これに対し、弁護側は平山さんがほかにもトラブルを抱えていたと指摘。

実際に隣人の女性が、事件直後に警察から殺害の心当たりを聞かれた際の話として、「奥さんに別れ話を切り出したところ拒否されて(平山さんが)お金を要求されている」こと、「平山さんが過去に交際していた女性が自宅に押し掛けてきた」ことの2つをあげ、山本被告との“植木鉢をめぐる隣人トラブル”の話はしておらず、当事者でさえ認識していなかったと反論。

「検察は無理やり動機としてこじつけようとしている」と、改めて無罪を主張しました。

8月には、事件から4年後の逮捕で指揮を執った大阪府警の警察官の証人尋問のほか、検察が求刑を行う最終論告と弁論が行われる予定です。

事件から6年、積み上げた証拠の先にある真相は…

難解な裁判の判決は9月27日に大阪地方裁判所で言い渡される予定です。

関西テレビ 司法担当 菊谷雅美

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