使用差し止めの仮処分を公示するため、指定暴力団・住吉会の本部事務所がある建物に入る執行官や弁護士ら=渡橋と新宿区で2024年7月18日午前8時55分

 東京都新宿区のマンションにある指定暴力団・住吉会の本部事務所について、東京地裁が使用差し止めを認める仮処分を決定していたことが関係者への取材で判明した。東京地裁の執行官が18日午前、マンションに立ち入り、文書を掲示して公示した。

 住吉会は指定暴力団で全国2番目の勢力を持つ。裁判所が暴力団の本部事務所に対する使用差し止めの仮処分を決定した過去最大規模の組織とみられる。

 関係者によると、仮処分の対象は、新宿区新宿7のマンションに住吉会の関連企業が保有している2部屋。建物の老朽化で港区赤坂の旧本部事務所を引き払った後、都公安委員会が2023年11月、新たな本部事務所として認定していた。

 その本部事務所は、他団体の幹部らが頻繁に訪問するなど組織の拠点となる一方、マンション近くには学校や地下鉄の駅といった公共施設もあり、市民生活への影響が懸念されていた。

 こうした中、近隣住人ら約40人が今年3月29日、公益財団法人「暴力団追放運動推進都民センター(暴追都民センター)」に委託する代理訴訟制度を使って、使用差し止めを求める仮処分を申請。

 東京地裁は6月28日、平穏な生活を営む権利を侵害されたとする住民側の主張を認め、仮処分を決定した。決定により、会合の開催や構成員らの立ち入りなど、部屋を組事務所として利用することが禁止される。

 さらに、暴追都民センターは今月16日付で、仮処分に違反して事務所を利用した場合、住吉会側に1日当たり100万円の制裁金の支払いを求める「間接強制」も、東京地裁に申請している。

 暴力団の本部事務所を巡っては、神戸地裁が17~18年、神戸山口組と任侠山口組(現・絆会)に対し、本部事務所の使用を差し止める仮処分を相次いで決定した。両組織はその後、本部を移転した。

 警察庁によると、住吉会は23年末時点で、構成員や準構成員らは計約3500人、勢力範囲は17都道府県に及ぶとされる。構成員らの人数は、特定抗争指定暴力団・山口組の計約7400人に次いで2番目。

移転には高いハードル

 指定暴力団・住吉会の本部事務所(東京都新宿区)の使用差し止めを認める東京地裁の仮処分決定を受け、住吉会は今後、不服申し立てなどの法的手段で現状維持を探るか、移転するかの選択を迫られる。

 新規の移転先を確保するには高いハードルが設けられている。民間は不動産取引から反社会的勢力を排除。自治体も暴力団排除条例で学校など公共施設近くで組事務所を開くことを禁止しており、事務所開設の包囲網は狭まっている。

 住吉会は長年、東京都港区赤坂のビルに本部事務所を構えていた。しかし、ビルの老朽化により、関連企業が2021年12月に区分所有権を売却するなどして、新宿にあるマンションに移転した。しかし近隣住民らの反発にあい、再び本部事務所を使えなくなった。

 移転先の「候補」には、埼玉県日高市の建物や千葉県富里市の事務所など、これまでも会合などを開いてきた東京近県の既存の関連施設が挙がる。

 一方、警察幹部は「最大の経済圏の東京に本部事務所を構えることには、暴力団にとって象徴的な意味がある。住吉会も簡単には『都落ち』しないだろう」とみている。

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