新潟水俣病の被害者や支援者との懇談であいさつする伊藤信太郎環境相(左手前から2人目)=新潟市中央区で2024年7月17日午前10時7分、中津川甫撮影

 伊藤信太郎環境相は17日、新潟市で新潟水俣病被害者団体と懇談した。被害者側は被害実態解明に向けて、患者が発生した阿賀野川周辺住民の健康調査を早期に実施することを求めていたが、伊藤氏は時期について「今後検討する」と述べるにとどめた。

 環境相が新潟県を訪れて被害者らと懇談するのは、公式確認から50年の式典が開かれた2015年以来。この日の懇談には、被害者や支援者約20人が参加した。

 伊藤氏は冒頭、5月に熊本県水俣市であった懇談で、環境省職員が被害者側のマイク音声を遮断した問題について「不適切な運営で改めて深くおわびする」と陳謝した。今年4月の新潟地裁判決で患者認定された新潟県阿賀町の皆川栄一さん(81)は「私たちには時間がない。生きているうちの解決が切なる思いだ」と訴えた。

 水俣病問題の全面解決に向けた具体案について問われた伊藤氏は、今回の懇談や実務者レベルの協議を通じて「新しい解決方法を共同で練り上げることが大事だ」と強調。自治体や被害者団体、加害企業との実務者レベルの協議を8月にも始めるよう事務方に指示したと明らかにした。一方、被害者側は解決に向けた具体策をただしたが、伊藤氏は「具体的には今申し上げられない」と回答を避けた。

 また懇談では熊本、鹿児島両県の不知火海沿岸での健康調査を「遅くとも2年以内」に実施すると改めて説明したが、新潟水俣病の調査については実施時期などに言及しなかった。

 懇談後、伊藤氏は新潟水俣病の原因を作った阿賀町の旧昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)鹿瀬工場の排水口付近を視察した。懇談は18日も行われる。【中津川甫】

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